愛労連2012国民春闘方針

愛労連第46回臨時大会(2012年1月22日/蒲郡市勤労福祉会館)
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愛労連12国民春闘方針(案)
――まともな賃金・まともな雇用・まともな社会保障を――


はじめに

2011年3月11日の東日本大震災は、日本の経済・社会に甚大な被害をもたらしました。東京電力の福島第一原発の事故は、いまだ収束のメドがたたず、放射性物質を出し続け、被害を拡大させています。被災地の復旧・復興は遅々としてすすんでいません。震災復興・原発事故をめぐって、日本の社会のあり方が根本から問われています。民主党政権の震災復興策は「構造改革型の創造的復興」であり、大企業の参入、「特区構想」や増税など、負担を国民に強いるものとなっています。復興はまさに憲法25条の「生存権」を基本にすえた被災者・被災地の立場にたったものでなければなりません。野田首相は昨年末、原発事故「収束宣言」をだし、脱原発の世論を抑え込み、原発推進の立場を明らかにしました。国民世論に対する真っ向からの〝挑戦〟です。

「国民の生活が第一」というマニフェストをかかげて政権についた民主党。2年半にわたる民主党の政権運営は、自公政権時代の「構造改革路線」を脱却できず、むしろ野田政権のもとでは強力に推進する立場にたち、「日米同盟の深化」「財界本位の政治」を突っ走っています。国民にとってこれほど危険な内閣はありません。一刻も早い政治の転換が求められています。日本経団連は12春闘にあたって、労働者の賃上げを拒否し、いっそう賃金を抑えこむ姿勢を示しています。

愛労連は12国民春闘で、賃上げをはじめとする要求実現と、財界本位・対米従属の政治を終わらせ、「憲法9条・25条を基本にした労働者・国民のくらしを守る政治」への転換を求めるたたかいとして位置づけ、国民的な運動の前進と共同の拡大で野田政権を追いこんでいく、そのスタートとして今春闘を思い切ってたたかいぬくものです。

 

Ⅰ 12国民春闘をめぐる情勢の特徴

1.労働者・国民のくらしの実態と拡大する貧困

(1)低下し続ける日本の労働者の賃金

 ① 右図(グラフ)の横軸は企業の経常利益、縦軸は現金給与総額(賃金)です。86年~91年および94年~97年までは経常利益の増加とともに賃金(現金給与総額)は増加していました。しかし98年以降、企業の経常利益は増加しても賃金は前年を下まわるようになります。この時期は当時の日経連が打ちだした「新時代の日本的経営」[1]にもとづく雇用破壊がいよいよ本格化してきた時期とかさなります。

 ② 98年~2008年の間にも景気回復の時期があり、賃上げのチャンスは幾度かありました。とくに、06・07春闘では「賃上げの好機」とまで報道される状況にありました。日経新聞でさえ「賃金出し渋るな」と社説をかかげたほどです。しかし、連合・大企業労組はベースアップ要求をせず、「賃金構造維持」(定昇制度を含む従来の体系の維持)要求に終始し、マスコミに「腰砕け」と書かれました。

08春闘では、当時の経団連の御手洗会長と福田首相が懇談し、政財界トップが「企業と家計を両輪とした経済構造の実現」を提起するに至ったにもかかわらず、大企業は円高などを口実に07年並みの回答にとどめました。

 ③ 年収200万円に満たない労働者が急増しています。非正規労働者の拡大とともに、「働く貧困層」=ワーキングプアは、1099万人に達しています。とりわけ若年層における低賃金化は彼らの「未来」をうばい、自立できない青年を増やしています。

 ④ 低賃金労働者は増えているのに、労働者の「賃金依存度」は高まっています。住宅・医療など社会保障・福祉分野における「応益負担原則の強化」により、住宅格差、教育格差、医療・介護格差が顕在化し、生活基盤の確保は、一般世帯においても「社会的固定費目」の膨張としてあらわれ、「賃金依存度」を高めてきました。

 ⑤ ワーキングプアの増大は、生活保護世帯の増大に直結しています。厚生労働省は昨年11月9日、全国の生活保護受給者が7月末現在で205万495人(速報値)になったと発表しました。ひと月前の6月末現在より8903人増え、これまでもっとも受給者が多かった1951年度の204万6646人(月平均)を3000人以上上回り、過去最多となりました。一昨年7月末現在と比較すると1年間で12万6597人も増え、毎月ほぼ1万人のペースで増え続けていることになります。このことが「子どもの貧困化」という深刻な事態を招いています。

(2)長時間・サービス労働の蔓延、精神疾患(うつ病)罹患者の増大

企業名

36協定(年)

特別条項

備考

大日本印刷

1920時間

特別条項外

業務不明

任天堂

1600時間

特別条項外

墨塗り業務不明

ソニー

1500時間

特別条項

品川テクノロジーも

ニコン

1500時間

特別条項外

 

三菱電機

1200時間

特別条項

休日労働含む

中部電力

1056時間

特別条項外

墨塗り業務不明

日本電気

1000時間

特別条項

 

NTTドコモ

1000時間

特別条項

 

※就職人気企業。日経新聞2010/10/22。

※特別条項とは、特別な事情が生じたときに、月45時間・年360時間という基準を超えることができるという規定に基づく。しかし①工作物の建設等、②自動車の運転の業務、③新技術・新開発の業務、④厚労省労働基準局長が指定する事業又は業務は、上限の適用はない。

 ① 長時間労働がもたらす労働者の健康破壊が問題になっています。あわせて、いま職場では経営者や上司によるパワーハラスメントが広がり、精神疾患・うつ病に罹患する労働者が急増しています。09年に、労災認定基準の「心理的負荷評価表」に、上司等のいじめについて「ひどいいやがらせ、いじめ、暴行を受けた」との項目が追加され、パワハラによる精神疾患の労災認定の可能性が拡大しました。セクハラの場合、雇用機会均等法第11条で「防止のための必要な措置」を事業者に義務づけていますが、パワハラの場合はいまだ規制がなく、泣き寝入りする労働者も少なくありません。

 ② 民自公3党は、昨年の臨時国会で労働者派遣法「改正」の骨抜きを強行しようとしました。その内容は、これまで民主党がかかげてきた「製造業派遣の原則禁止」「日雇い派遣の原則禁止」という大穴だらけのものでしたが、「原則禁止」規定を取り払うという、まったく実効性のない〝改正〟を3党ですすめようとしています。12月7日、衆院厚労委員会で修正・付帯決議をつけて可決されました。引き続き骨抜きを許さないたたかいが求められます。

 ③ JMIU中外分会の仲間は解雇撤回闘争で、名古屋高裁判決を受けて、会社が上告を断念。勝利判決が確定し、1月6日、勝利判決後、はじめて職場に復帰しました。有期雇用労働者の雇い止め問題で、今後のたたかいに大きな影響をあたえるたたかいとして評価できるものです。しかし、会社は「謝罪はしない」という姿勢であり、分会は今後も労働条件の改善と正規社員化をめざして奮闘することにしています。

 ④ ソフトバンク過労死労災認定裁判で原告勝利判決が、会社側の控訴断念によって「労基署の不支給処分」を取り消し、労災認定が確定しました。亡くなられたのは小出堯さん。うつ病の発症や自死に至ったのは業務による加重性を認めました。争議団や健康センター、愛労連などが支援、09年11月の提訴以来、2年にわたるたたかいで、労災認定闘争に大きな一歩をきざむ判決となりました。

(3)大学生・高校生の就職率は過去最悪

  ① 大学生など新規学卒者の就職問題も深刻な事態になっています[2]。厚労省が11年4月に明らかにした4月1日現在の「就職内定率」は91.1%となり、調査を介した1996年以降、2000年3月と同率で過去最低となりました。また内定取り消しは598人で、そのうち4割が「仕事が見つからない」か、進学等に切り替えたものと考えられます。

仕事につけない理由 ② 仕事にもつかず、学業にもつかないいわゆる「無業者」がふえています。統計的にみても「条件にこだわらないが仕事がない」という人が2006年9.0%、これが2010年には男性で16.7%にものぼっています。こうしたもとで青年労働者が全体として減少しています。とくに正社員の減少幅が大きくなっています。

 ③ 新規学卒者の就職難の最大の原因は、大企業が採用枠をせばめていることにあります。また中小企業等では経営がきびしいため、採用にふみきることができないという事情があります。

2.停滞する日本経済の打開と東日本大震災復興

(1)大企業の内部留保、富の独占

 ① 大企業の内部留保は過去最高額になっています。トヨタは13兆8630億円の内部留保をため込みながら08年リーマンショック時には大量の期間社員を解雇しました。また3.11大震災、タイの洪水、歴史的な円高などのもとで、またも下請に対するコストダウンを強要しています。

大企業の内部留保の増減と賃金の増減

出所:労働総研「内部留保をめぐるいくつかの議論について」

 

 ② トヨタは中電「浜岡原発の運転停止」にともなう「電力不足」を口実に、木金休み・土日出勤を強行しました。その結果は労働者と市民に混乱をもたらしだけで、けっきょく節電で利益を得たのはトヨタだけでした。勤務変更にともなう保育園では、子どもたちにもストレスを与えることになりました。

 

トヨタグループ内部留保と賃上げ・雇用増の試算(国公労連作成)

 

内部留保額(億円)

従業員数(人)

月1万円賃上げの場合

内部留保取崩率(%)

内部留保の1%による雇用増の人数(人)

(年収300万・1年)

正  規

従業員数

臨  時

従業員数

正規

非正規

合計

トヨタ自動車

138,630

317,716

66,396

0.41%

0.06%

0.47%

46,210

トヨタ車体

2,416

16,872

4,574

1.26%

0.23%

1.48%

805

デンソー

22,489

123,165

18,505

0.99%

0.10%

1.08%

7,496

トヨタ紡織

2,100

27,856

6,393

2.39%

0.37%

2.75%

700

豊田自動織機

5,680

40,823

8,698

1.29%

0.18%

1.48%

1,893

アイシン精機

7,761

74,671

13,259

1.73%

0.21%

1.94%

2,587

 

 ③ 上記表は、12国民春闘白書に掲載されている主要大企業の内部留保について、非正規労働者を含むすべての労働者の賃上げ(月1万円・年収300万円/1年)した場合、および1%を取り崩した場合の雇用増について国公労連が試算したものです。これによると、トヨタ自動車1社で、月1万円の賃上げではわずか0.47%、1%で46,210人もの雇用が生まれるというものです。株主配当を増やし、役員報酬を引き上げる一方で、労働者や下請には賃下げ・単価切り下げを強要するやり方に終止符をうつたたかいが重要になっています。トヨタの社会的責任(企業のCSR)がいまほど求められているときはありません。

 ④ トヨタなど多国籍企業は円高などを理由に、さらに海外生産比率を高めるとしています。国内の従業者数は減少、逆に海外現地法人の従業者数は確実に増加しています。この間(97年~13年間で)、大企業の経常利益は15.1兆円から32.3兆円と2.1倍に増加、内部留保[3]は142.4兆円から229.1兆円へと1.6倍に増加しています。大企業の成長が日本の国内・地域経済に滴り落ちる(トリクル・ダウン)流れはたちきられ、利益は海外投資や投機にまわされました。

(2)大企業のグローバル戦略と日本経済

 ① 今日の日本経済の最大の特徴は、大企業が輸出・海外生産によって、利益を大幅に伸ばす一方で、中小企業は倒産・廃業が続き、きびしい経営状況を強いられていること、また労働者は賃金の低下、長時間労働と精神疾患の増大、貧困の増大のように、格差がかつてないほど拡大していることです。そのことが内需を冷やし、デフレ経済におとしいれているのです。財界はあいかわらず「国際競争力強化、グローバル競争」を主張、もはや「国民経済」を見限っています。

 ② トヨタは、タイの洪水によって部品の調達が困難になり、関連企業では労働者の「休業」などが広がりました。トヨタは「儲かるところで生産し、販売する」というのが基本的な姿勢ですが、西三河・東北・九州の3拠点で国内生産を維持することも表明しています。下請構造も〝しがらみ〟のない地域での再編をすすめようとしています。

(3)減少する中小零細事業者数と従業者数、衰退する地域経済

 ① 愛知県・名古屋市ではとくに小規模事業所(4~29人)が対前年比で、愛知県は-11.2、名古屋市は-12.0と二桁で減少しています[4]。中小企業調査(10年、11年に実施)でも「仕事がない」「後継者がない」などの理由で廃業するという事業所やすでに廃業している事業所がかなり多くありました。

減少する事業所・従業委員数 ② 従業者も年々数万人規模で減少するなど、このままでは地域経済は立ちゆかなくなります。工場跡地には駐車場、コンビニなどが進出し、さらに大規模マンションの建設などによって、まちそのものがこわされ、人が住めなくなる可能性があります。市民がその地域で働き、買い物ができるなど、生活を守るためにも地域における中小企業が〝元気を取りもどす〟ことが必要です。

(4)東日本大震災復興をめぐる対決、原発推進から自然エネルギーへの転換

 ① 復興における財界の戦略と住民本位の復興の対決がするどくなっています。政府・財界の「復興構想」は、大型インフラを最優先、農業や漁業の大規模化をめざすとしています。これに対して住民本位の生活再建、生業の再建をめざす路線との対決です。政府・宮城県知事がすすめる水産業における特区構想は、漁民のくらしを押しつぶすものであり、漁業を壊滅させてしまいます。

 ② 財界は、今回の震災を〝絶好のチャンス〟とみなし、「構造改革路線の推進」を政府に迫っています。東北を「創造的復興」の名で、「東北州の設置、法人税減税をすすめ、大企業を誘致、それが雇用を拡大する」(経済同友会)という主張で強引にすすめようとしています。しかし、彼らのいう雇用は非正規労働者であり、「正規労働者の無制限な長時間労働など労働基準の規制緩和」(日本経団連)です。

 ③ 政府は原発再稼働に動いています。ほとんどの電力会社が原発推進のために「やらせ」を政府ぐるみでおこなっていました。しかし、いまなお福島第一原発は放射性物質を出し続け、収束のメドがたっていません。東電による被害者への補償もすすまないまま、原発再稼働にむけた政府のやり方は国民に対する裏切りそのものです。野田佳彦首相(原子力災害対策本部長)は12月16日の記者会見で、「原子炉は『冷温停止状態』に達し、事故そのものは収束に至ったと判断できた」として、事故収束にむけた工程表の「ステップ2」の完了を宣言しました。原子炉圧力容器底部の温度が100度以下であることや、原子炉建屋上部からの放射性物質の放出が1~3号機あわせて1時間あたり6000万ベクレルと見積もり、それによる被ばく線量が原発敷地境界で今後、年間1ミリシーベルトを下回るとして、「冷温停止状態」「事故収束」を宣言しました。

 ④ 政府の〝収束宣言〟に「核燃料棒が溶け、圧力容器の底から抜け落ちているのに収束したというのは、これ以上、避難住民を愚弄(ぐろう)する言葉はない」と、福島県民は怒りの声をあげています。18日午後、3閣僚(枝野幸男経済産業相、細野豪志環境相兼原発事故担当相、平野達男復興担当相)が県庁入りしましたが、抗議の声が県庁前であがりました。

 ⑤ 〝脱原発〟の世論が大きく広がっています。自然エネルギーへの転換が必要です。太陽光発電、小規模水力発電など各地でとりくみが広がっています。こうした経験に学び、愛知においても転換にむけたとりくみが求められています。愛知県では海に面した地域での風力、山間部のバイオマス、都市部の太陽光発電など、自然エネルギーの資源は豊富にあります。これらを生かした自然エネルギーへの転換は十分可能です。

3.民主党政権の反国民的策動とのたたかい

(1)「社会保障と税の一体改革」、消費税10%の大増税の押しつけ

「一体改革素案」 社会保障部分のおもな項目 ① 野田首相は国民に説明する前に国際会議で「10年代半ばまでに消費税を10%に引き上げる」ことを「国際公約」しました。「少子高齢化で社会保障財源が不足するため『社会保障目的税』として消費税引き上げ、財源を確保する」などと主張し、社会保障を〝人質〟にしています。

これを許せば「社会保障拡充の要求」が「増税」になります。大企業の負担が国際的にみても低いこと、突出した軍事費の削減、政党助成金などむだ遣いにはまったく手をつけず、消費税引き上げ先にありきの姿勢です。「税の再配分機能」が失われています。税・社会保障がはたす本来の役割を発揮するよう求めていく必要があります。

 ② 民主党は12月16日、社会保障全般に関わる改悪案を示しました。今年の通常国会に法案として提出するものだけでも、

  • 後期高齢者医療制度の看板をかけかえて差別医療を残す「新制度」を導入
  • 来年度から基礎年金の国庫負担2分の1を将来の消費税増税で担保
  • 「特例分の解消」を口実に来年10月から3年で支給額を2.5%削減
  • 消費税大増税でまかなう最低保障年金制度新設(2013年度に法案)
  • 公的責任を放棄する「子ども・子育て新システム」を創設

このほか、介護、生活保護など法改定なしで改悪がすすめられようとしています。

 ③ 社会保障の全面的な改悪は、さらに格差と貧困を拡大し、すべての国民の生活をおびやかすものです。「消費税増税と社会保障の一体改悪」にほかなりません。この大改悪は民自公の〝大連立〟で強行する構えです。12国民春闘はまさに社会保障改悪・大増税反対の一点で国民的規模のたたかいが求められています。社会保障制度のあいつぐ改悪のなかで「応益負担」の拡大が家計を圧迫、医療でも支払いができず、受診を抑制し、重病化するケースがあります。

(2)普天間基地「移設」と日米同盟の深化

V-22 オスプレイ ① 普天間基地の移設[5]をめぐって、沖縄県民は民主党政権に対し、怒りの抗議をくり返しています。10年11月14日、沖縄県議会は政府の「辺野古移設」案を撤回するよう決議案を採択しました。民主党はマニフェストで「国外・県外」移転を主張していたにもかかわらず、アメリカに〝一喝〟されて180度転換、鳩山・菅内閣に続き、野田政権もアメリカに屈し、沖縄県民の願いを裏切っています。アメリカは普天間基地に、事故が多発している「垂直離着陸機・オスプレイ」の配備を2012年6月に配備することを明らかにしました。基地の撤去をねがう県民への〝恫喝〟です。

 ② 菅内閣以降、民主党政権は、自公政権時代の「日米同盟の深化」を明確に打ちだし、日本を危険な方向に導こうとしています。日米同盟はアメリカの核の抑止力によって世界戦略に日本を深くくみこむもので、アジア各国から警戒の目がむけられています。民主党政権下で、「新防衛大綱」の制定、先島諸島への自衛隊の配備、米軍と自衛隊の空中給油に関する「覚書」が1年も前に米軍と自衛隊の間で交わされていたことが発覚、憲法に違反する行為を堂々とくり広げています。野田政権の実態は、日本国民に対する責任より、アメリカ政府の機嫌を伺いっていることは明白です。基地問題、消費税の引き上げ、TPP参加の態度決定はまさにアメリカの〝使い走り〟といわれても仕方ありません。

 ③ しかし11月25~27日に沖縄で開催された「2011日本平和大会in沖縄」で、沖縄県民は「普天間基地の撤去、基地はいらない」が〝オール沖縄〟の声だと力強く意思表示しました。また岩国や横須賀など全国各地で「基地ノー」のたたかいが広がっています。航空自衛隊小牧基地をかかえる愛知でも、全国のたたかいと連帯して基地撤去、基地のない愛知をめざしていきます。

 ④ 沖縄・米軍普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古への新基地建設をめぐり、防衛省は12月28日、環境影響評価書を沖縄県に提出したと発表しました。しかしその実態は、午前4時に県庁守衛室に押しかけ、評価書が入った段ボール16箱を搬入したというもので、常軌を逸したやり方です。又吉進知事公室長は「形式的要件が整っておれば受理する」と表明。県の見解では、到達日の翌日から起算して知事意見の提出期間が数えられます。90日後に埋め立て部分での意見を提出することになっています。飛行場建設については、追加部数が届くまでの日数を除き、45日後となっています。しかし仲井真弘多知事は、環境アセスが終了して政府が辺野古の埋め立て申請を出した場合、承認しないとの意向を示しています。日米両政府による新基地建設強行の動きは、重大なゆきづまりに直面しています。県議をはじめ多くの県民は「こんな異常を容認するのか」とはげしく抗議しました。

(3)野田政権12年度予算案と通常国会

 ① 12月24日に閣議決定された野田政権の12年度予算案は、消費税増税と社会保障の「一体改悪」をすすめるという内容になっています。これをうけて、民主党は12月29日、税制調査会、「税と社会保障一体改革調査会」を開き、「消費税を10%に引き上げる(14年・8%、15年・10%)」ことを〝了承〟しました。また、次期通常国会で国会議員の定数削減法案についても提出することを明らかにしました。軍事費や大型公共事業(八ッ場ダム工事再開)など、ムダな歳出を増やす一方で、また大企業や富裕層の減税は維持したまま、労働者・国民への負担増は許されるものではありません。

 ② 国会議員の定数削減は、国民の総数意見を切り捨てるものでムダの削減とはほど遠いものです。国会議員80人をへらしても年間80億円、それよりも政党助成金320億円の廃止を優先すべきです。「身を削る」というなら、まずこれを実行すべきです。

 ③ 政府は通常国会で国家公務員の賃金削減法案を成立させるかまえです。これは明らかに大増税への〝露払い〟であり、震災復興で奮闘する公務員労働者に犠牲を強いるものであり、消費不況に拍車をかけることになります。

 ④ 昨年末、民主党政権は公約のひとつであった「労働者派遣法の改正」について、政府自身が提起していた改正案をさらに〝骨抜き〟にする「改悪案」を自公とともに、通常国会で成立させるとしています。その内容は「製造業派遣の原則禁止」「登録型派遣の原則禁止」さえ、とっぱらい現行法と何ら変わらないものに〝変質〟させる内容です。08年末、全国で派遣切りが横行したことなど、なかったかのような後退したものです。大企業の身勝手な労働者の使い捨てをやめさせるためにも労働者派遣法の抜本改正こそ、いま求められています。

 ⑤ 連合は公務員賃金削減法案にかかわって、この成立をうながすよう政府に求めています。労働基本権付与を口実にしていますが、毎年平均で7.8%も削減すればどういう事態になるのか、まったくお構いなしで、労働者の切実な要求に背をむけています。また、消費税増税を含む、一体改革について、野党に対して、協議に応じるよう求めるなど〝これが労働組合のやることか〟といいたくなるような対応をしています。

(4)「TPP参加」と国民のくらし

 ① 野田首相はTPP参加について11月10日、APECにあわせて「参加表明」しました。まったくの愚行です。TPP参加をめぐって、急速に反対する運動が全国でくり広げられました。国民の世論の高揚で民主党内でも「慎重派」が多数であったにもかかわらず、参加を表明したことは、まさにアメリカの要請に忠実に応えたものといわざるをえません。

 ② 米下院歳入委員会貿易小委員会は12月14日、環太平洋連携協定(TPP)をめぐり、マランティス次席通商代表らを証人として公聴会を開きました。そのなかでマクダーモット議員(民主党)は、日本を名指しして、農業・自動車・保険分野などでの「市場の閉鎖ぶりは悪名高い」と主張。日米間協議で〝開放〟を強く求めるべきだとの姿勢を示しました。このなかで、ヘーガー議員(共和党)は「私の選挙区である北部カリフォルニアにとって、特にコメは重要だ。日米協議はどうなっているのか」と質問。スミス議員(共和党)も、自身の選挙区事情から「牛肉が重要だ。非科学的な基準が米国産品にあてがわれている」として、安全基準について注文をつけました。交渉参加以前から、アメリカの露骨な姿勢がはっきりしているのに、対等な協議などできるはずがありません。

 ③ 労働分野[6]では、P4の段階ではなかった「投資」「労働」分野がアメリカによって持ちこまれました。2つとも日本がねらいです。「日米投資イニシアティブ」「年次改革要望書」などで、日本の企業を「M&A」で買収・転売で利ざやを稼ぐ、また「労働」分野ではこれまで、アメリカは労働法制の規制緩和を執拗に日本に求め、自公政権はこれに応えてきました。「解雇の金銭解決」「ホワイトカラーエグゼンプション」導入もアメリカの〝要望〟だったのです。TPP参加で労働分野はまさにこうしたアメリカのつよい要求がつらぬかれることになります。

④ 労働組合の自主共済[7]などもターゲットになります。共済問題は05年に保険業法の〝改正〟で自主共済も民間の保険業と同様に扱うこととされましたが、労働組合などの反対もあり、JA共済、労働共済などは当面例外扱いとされています。しかしTPP参加となれば一気に例外規定が破棄され、共済事業は大きな影響を受けることになります。

 ⑤ 政府調達については、政府自身も「現時点では中央政府」に限定した基準について議論しているとしていますが、自治体(地方政府)も今後取り上げられるとし、現行都道府県と政令市にとどまっている対象機関が、小規模自治体に拡大すれば多大な事務負担を強いることになるとしています。P4基準がそのまま適用されるかどうかは不明ですが、TPP参加国がむすんでいるFTAでも現行WTO基準に比較してきわめて低くなっているため、地元事業者が排除され、海外から建設事業者や大手の建設業者が参入しやすく、それにともなって低賃金労働者が流入してくることが考えられます。

公共調達

発注機関

国際基準(WTO)

国際入札(P4) 

公共工事

6.9億円

7.65億円

地方自治体

23億円

公共サービス

6750万円

750万円

地方自治体

2.3億円

※WTO協定で、地方自治体で対象になっているのは都道府県と政令指定都市。P4では中央政府のみ適用。

 

 

 

 

 

 

 ⑥ 農産物輸入の場合、加工度があがればあがるほど、関税が高くなるしくみになっています「タリフエスカレーション(傾斜関税)」。これによって国内の食品加工業が成り立ち、雇用が維持されています。これが撤廃されれば雇用は失われることは明らかです。

 ⑦ TPP参加は日本の農業を壊滅させるばかりか、食料関連産業、医療・介護分野、政府調達、労働分野など、社会を構成するあらゆる分野で関税と非関税障壁の撤廃がすすめられます。このことによって雇用が奪われることになります。コメの関税も例外ではありません。逆に「安い食料」が大量に流入し、さらに食品の安全基準さえとりはらわれ、国民の健康・いのちに重大な影響が懸念されています。
<例>・生鮮トマト(3%)⇔トマト・ピューレ、ペースト(16%)。・うんしゅうみかん等(17%)⇔オレンジジュース(29.8%)。

 ⑧ しかし、TPP参加撤回のたたかいはこれからです。事前協議や国会での批准など最終的な判断の段階までねばり強くたたかうことが求められています。

 

Ⅱ 12国民春闘 たたかいの基本と課題

❍たたかいの基本

2012国民春闘は、労働者・国民のくらしといのち、平和・民主主義など日本の進路に関わるたたかいとなります。愛労連は、とりくみを以下のようにすすめていきます。

 1)年末から2月11日(トヨタ総行動)までの間は要求討議と学習を重視した期間とし、あわせて労働者の要求実現をはばむ大企業に対するたたかいをすすめます。

 2)2月中にすべての職場で要求書を提出します。

 3)3月中旬(3.13重税反対統一行動前後)までに第1次回答を引き出し、上旬に全組合員参加の行動を配置します。この間に「目に見え、音に聞こえるとりくみ」をつくりだします。

 4)2.23地域総行動において、地域で広範な市民へのアピールをすすめます。

 5)「3.11明日につなげる大集会」(東日本大震災1周年)を県民レベルで成功させていきます。

❍要求課題とたたかい

1.労働者のくらしを守るたたかい(ディーセントワークの確立)

(1)賃金引き上げ、とくに要求討議を重視してとりくむ

 ① 「最低生計費」を生かした賃金要求を確立します。あいつぐ賃下げのもとで公務労働者になかにも「将来設計がたたない」「家のローンが組めない」など、深刻な生活実態が浮き彫りになっています。賃金引き上げを最大の課題に位置づけて春闘をたたかいます。

 ② 「最低生計費」調査(下記表)をもとに、年齢(年代)ごとの「最低生計費(税込年額)」を目安とした賃金引き上げの議論をおう盛にすすめます。

 

25歳・単身

30代夫婦のみ

30歳代夫婦

子ども一人

40歳代夫婦

子ども2人

税込年額

2,678,760円

3,911,352円

4,938,876円

6,298,044円

税込月額

223,230円

325,946円

411,573円

524,837円

時間額換算

1,285円

1,876円

2,368円

3,020円

※時間額換算は税込み月額を月労働時間173.8時間で割り出した。

 

 

 

 

 

 そして、「25歳・単身者」で「月25万円・年300万円の賃金は当たり前」の世論を結集し共感を広げていきます。

 ③ 全労連としてかかげる統一賃金要求案は、

  • 「だれでも時間額100円以上、月額1万円以上の賃金引き上げ」の水準引き上げ
  • 「時間額1000円、日額7500円、月額16万円」の到達要求

上記2本立ての「底上げ」要求は、12国民春闘でめざす「統一要求」であり、上記の賃金要求でたたかいを切り開き、その実現に全力をあげていきます。

 ④ 3月中旬を第1次集中回答日とし、すべての単組・支部・分会で2月中に要求書を提出、3月上旬の交渉配置、3月8日(木)の中央行動に積極的に参加します。

 ⑤ 3月13日の「重税反対統一行動」に積極的に参加するとともに、この日から第1次集中回答までの間を「目に見え、音に聞こえる春闘」をつくりだすこととします。

 ⑥ 全国統一行動の提起を受けて、愛労連・愛知春闘共闘として3月15日(木)18:30~・栄広場(予定)で労働者決起集会を開始します。

 ⑦ 公務員賃金闘争が焦点になります。国会にける公務員賃金削減法案の阻止のために全力をあげるとともに、愛知県職員の賃金切り下げ、また名古屋市の5%減税実施にともなう賃金・労働条件の切り下げに反対するたたかいに全力で支援していきます。

(2)公契約・最低賃金のたたかい

 ① 公契約条例制定が緊急性を増しています。公契約条例の制定は「地元建設業の育成」や「まちづくり」という観点からも重要なとりくみです。とくに今回の東日本大震災のような災害時には、地元業者のまとまりがなければ、復旧に重大な遅れをもたらすことになります。TPPとの関連でも、公契約条例制定の運動がこれまで以上に重要になります。

 ② 愛知生公連などと共同して、自治体に対し、強く条例化を求めていきます。

 ③ 12月議会で、大村知事は「公契約条例化に向けて検討をはじめる」と答弁しました。県が条例化すれば市町村にも大きな影響をあたえます。愛労連として条例化にむけて意見表明を積極的におこないます。

 ④ 最低賃金引き上げのたたかいを強化します。最低賃金は最低生計費との比較でも全国で下まわっています。地域最低賃金の引き上げとともに、「月額16万円・日額7500円・時給1000円以上」の全国一律最低賃金制の確立をめざします。

 ⑤ 最低賃金の低さを告発するとりくみとして、以下の内容で「生活体験」にとりくみます。最低賃金引き上げ・賃金引き上げをめざす学習会を開催します。

 ⅰ)最賃生活体験のとりくみ

期間  2月1日~29日

  • 最低賃金生活チャレンジャー20人以上を確保
  • 家計簿調査チャレンジャー 80人以上を確保
  • ともに家計簿にもとづく体験ですが、今回とくに重視するのは「3食の食事内容」です。適正な栄養が摂取できているかを調べます。

 ⅱ)最賃引き上げをめざす学習会

日時  1月26日(木)18:30
場所  労働会館第一会議室
講師  福田裕行氏・神奈川労連副議長「最賃裁判原告団」

 ⅲ)中間激励会を2月17日(金)、DW(11)宣伝行動のあとにおこないます。

2.長時間労働・サービス残業をなくし、雇用の安定・拡大をはかるたたかい

(1)長時間労働、サービス残業をなくすたたかい

 ① 正規労働者に広がる長時間・サービス残業の解消(労働時間短縮のキャンペーン)が重要な課題になります。日本経団連は労働基準のいっそうの緩和を求めています。震災であろうが生産増であろうが、労働基準は「労働者が人たるに値する生活を営むものでなければならない」のであって、企業の都合で〝弾力化・柔軟さ〟を求めるものではありません。

 ② 労基法違反を可能なかぎり告発するとりくみをすすめます。具体的には労働相談などで違反が明らかになった場合には、労基署や労働局に申告するなど、運動を広げます。また過労死をだした企業名の公表に対する判決がだされましたが、公表を行政に強く求めていきます。

 ③ ディーセントワーク(人間らしく働くまともな仕事)の確立をめざして、引き続き宣伝行動を労働組合への共同の申し入れ、行政への要請などにとりくみます。

 ④ 政府統計でもひとり平均で年200時間のサービス残業があるとされています。サービス残業の根絶のために経営者団体・企業に要請します。

 ⑤ ディーセントワークデー(毎月第3金曜日)に引き続き単産からの参加を求めて実施していきます。

 ⑥ 「過労死防止基本法制定」をめざす100万署名を推進します。

(2)雇用の安定・拡大、就職連絡会のとりくみ

 ① 失業率が高止まりしています。失業者も高い水準で推移しており、失業が長期間化しています。一方で長時間労働がはびこっています。最大の原因は大企業が正規社員の採用を極端に絞り込んでいることにあります。賃上げによる内需拡大と同様、労働時間短縮による雇用の拡大を求めていきます。

 ② 新規学卒者の就職問題が深刻です。10年度就職活動を苦に自殺した人は46人にのぼっています。就職連絡会の活動を強化します。また、企業に対して直接、採用枠の拡大などを要請していきます。

 ③ 雇用保険制度の改善を求めるとりくみをすすめます。失業が長期化するもとで現在の給付期間や給付額では再就職先を見いだすのは困難であり、給付期間の延長ないしは失業給付制度の実現などを求める全国的な運動をすすめます。

 ④ 三菱派遣切り裁判が11月2日に名古屋地裁でだされました。派遣先である三菱電機を糾弾しましたが、「正規社員に」との訴えは退けられました。原告は控訴し、引き続き奮闘することにしており、支援を強めます。

 ⑤ 社保庁職員の不当解雇、JALの不当解雇をはじめ、大量の解雇があいついでいます。またソニー仙台工場の期間社員、コロナのアルバイト568人の解雇など、震災に便乗して労働者を解雇する企業があいつぎました。こうした企業の身勝手を許さず、労働者の雇用を守るたたかいを全国的なとりくみと連帯してすすめます。JAL不当解雇撤回の支援する会の結成総会を以下の日程・場所でおこないます。

日時  3月31日(土)14:00~
場所  ウィンクあいち

 ⑥ 民・自公による労働者派遣法「改正」の骨抜きを許さないたたかいをすすめます。当面、全労連が提起する署名などにとりくみ、ディーセントワーク宣伝で骨抜き反対・抜本改正を求めていきます。

 ⑦ JALや社保庁の解雇問題、有期雇用・パート労働法「見直し」などが日程にのぼってくることもあり、非正規労働者の雇用の安定と権利を守るために、「権利討論集会」を開催し、非正規労働者の実態を中心に掘り下げます。

日時  12年5月19日(土)
場所  労働会館
内容  パ臨連や労働法制連絡会、東海労弁・自由法曹団とも協議します。

3.「社会保障と税の一体改革」、「地域主権改革」とのたたかい

(1)社会保障制度改悪に反対する

 ① 社保協とともに、愛知は30万筆目標でとりくんでいる社会保障充実署名を、愛労連として組合員ひとり5筆目標ですすめます。

 ② 「子ども・子育て新システム」を許さないたたかいを関係単産と協力してとりくみます。

 ③ 医療・介護改悪に反対するとりくみを社保協や関係単産と協力してすすめます。

 ④ 年金制度改悪反対のたたかいを強化します。とくに年金額の削減、支給開始年齢延長(68歳~70歳)という政府案を撤回させるために、年金者組合、「安心年金つくろう会」などと協力し、宣伝の強化や議員要請・中央行動等に積極的にとりくみます。

 ⑤ 第13回愛知社会保障学校への参加をよびかけます。

日時  12年2月19日(日)10:00~
場所  労働会館本館
講師  柴田英昭氏(立教大学教授)

 ⑥ 企業の社会保険負担増を求める運動を展開します。日本の大企業は先進国と比較して社会保険料負担が低くなっています。少なくとも欧州並みに引き上げる運動を広げます。

 ⑦ 「地域主権改革」にもとづく、保育・福祉職場等の設置基準等の変更が国基準を下まわることのないよう、関係単産と協力してとりくみをすすめます。また、「地域主権改革」にはハローワークや国交省・地域整備局など国の機関の地方移管などがもりこまれています。こうした動きを許さないたたかいをすすめます。

ⅰ)地域主権改革フォーラム(仮称)への積極的な参加をよびかけます。

日時  3月3日(土)13:30~
場所  中区役所ホール

ⅱ)憲法が暮らしに生きるまち名古屋へ「市民のつどい2012」に積極的な参加をよびかけます。

日時  3月4日(日)10:00~16:00
場所  名古屋国際会議場

 ⑧ 名古屋市で保育における企業参入を4月から実施することをうちだしました。自治労連・福保労をはじめ保育をよくするネットワークなどが中心に、抗議行動をすすめています。「保育に営利法人はなじまない」ことを強く訴え、公的保育拡充をめざすとりくみを支援していきます。名古屋市・河村市長の5%減税のあおりで、市民のくらしが脅かされています。とくに建交労に結集する保育パート労働者の場合、契約時間の短縮による賃下げ・人員削減が強行されようとしています。建交労保育パート支部はスト権を確立してたたかうことにしています。建交労の提起に応え、これを積極的に支援していきます。

(2)消費税増税・庶民大増税は許さない

 ① 消費税増税(10%)・法人税減税に反対する運動をすすめます。「社会保障目的税」など、政府の主張の欺まん性をあばく宣伝を強化します。「消費税を止めさせる会」などが主催する宣伝行動に積極的に参加します。

 ② 大企業には法人税など大盤振る舞いの減税、富裕層・証券取引税軽減の延長などをすすめる一方で、政府の税制調査会は庶民増税を強化しようとしています。大企業の負担軽減・庶民増税に反対する運動を強化します。

 ③ 3.13重税反対統一行動に全県的な参加をよびかけていきます。県下各地での実施次回・場所についてはあらためて連絡します。

 ④ 消費税導入23周年3.31ロングラン宣伝行動に積極的に参加します。

4.地域経済・中小企業、農林水産業団体・事業者との共同の追求

(1)中小企業調査結果と運動の展開

 ① 「中小企業実態調査」の結果を生かしたとりくみをすすめます。「名古屋市の〝新しいものづくり〟をめざすシンポジウム」(12月9日)での議論をふまえ、今後、中小企業と地域の活性化にむけたとりくみをすすめます。

 ② 大企業応援ではなく、中小企業が元気になるまちづくり(名古屋市外も視野に入れて)をすすめる運動を提起します。

 ③ 愛知県は「産業労働ビジョン」で「中小企業振興条例」の制定をかかげています。愛労連として、積極的な意見表明をおこなっていきます。

(2)TPP参加反対、業界団体・事業者との共同(懇談等)のとりくみ

 ① TPPへの参加表明した野田内閣に対し、抗議の宣伝をはじめ、撤回にむけたとりくみをすすめます。今後、事前協議に3か月、米議会承認に90日、交渉参加は2012年、政府署名は13年、批准が14年程度の日程になると予想されており、たたかいはこれからです。多くの職場・地域でTPPの危険性について学習会をくり広げます。

 ② TPPは時間がたてばたつほど正体が明らかになってきます。そのため、業者・業界団体など広範な団体、階層等との懇談を広げ、反対の声を大きくしていく運動をすすめます。

 ③ 11月18日の「講演会実行委員会」が提起する行動に積極的に参加するとともに、事業者・研究者との共同をすすめます。国民的にアピールする場合、「食料主権の確立」「こどもたちに美味しい食材」をおしだし、消費者・国民にアピールしていきます。

(3)脱原発・自然エネルギーへの転換をめざして

  ① 脱原発・自然エネルギーへの転換をめざす宣伝行動をブロックの行動としてすすめます。時期を3月15日から富山県をスタートに、静岡・浜岡原発まで、福井・敦賀、石川志賀原発をふくむコースで「脱原発リレー宣伝行動」をおこないます。

 ⅰ)富山市→石川・志賀町→敦賀市(福井)→岐阜市→津市→名古屋市→豊橋市→浜松市→浜岡原発
  それぞれの地方労連(県評)が県内の宣伝に、責任をもってとりくむこととします。

 ⅱ)各都市での宣伝には当該地方労連で参加者を確保し、宣伝行動を中心におこないます。

 ② 脱原発・自然エネルギーへの転換が全国的に広がりはじめています。11月13日におこなった第28回トヨタシンポジウムで、井内直樹教授は名古屋市内でも中小企業の仕事おこしと自然エネルギーへの転換は可能であると強調しました。中小企業調査の実行委員会等でさらに議論を重ねていくこととします。

 ③ 自然エネルギーについて全国的な先進例がありますが、そうした情報の提供や現地視察などのよびかけ等に参加するようにします。

5.大企業の社会的責任を求めるたたかい

(1)第33回トヨタ総行動の目的

 ① トヨタ自動車およびそのグループ企業は、08年のリーマンショック時に大量の期間社員、派遣労働者を解雇しました。その後、急速に業績を回復したものの、11年3月11日の東日本大震災、9月以降のタイ洪水など、生産に影響をおよぼすような災害があいつぎました。トヨタおよびそのグループ企業は、そのたびに非正規労働者を「解雇」や「休業」をさせて〝調整〟をはかってきました。

 ② こうした業績の向上、利益はトヨタ企業内にためこまれ、下請企業や労働者には還元されませんでした。豊田市内の中小零細企業の8割が赤字となり、地域経済は深刻な事態に落ち込み、市民のくらしが脅かされています。また昨夏、中電・浜岡原発の停止にともなう〝節電〟のため、木・金休み、土日出勤を強行し、市民生活にも大きな影響をあたえました。さらにトヨタは国内生産体制の再編をすすめ、東北・西三河・九州の3拠点で整備をすすめ〝しがらみ〟のない下請構造の構築や円高などを口実にさらに海外生産へのシフトを強めることにしています。こうしたなか、トヨタの足元から「トヨタは内部留保を地域・下請企業に還元せよ」の声をあげることが重要になっています。

 ③ 02年に発足した日本経団連の初代会長としてトヨタの奥田碩氏が就任しました。当時の小泉内閣と一体となって「新自由主義・構造改革路線」を推進しました。その路線が、増税・社会保障解体として民主党政権に受け継がれています。増税・社会保障制度切り捨ての責任はトヨタにもあります。トヨタの社会的責任の追及を強くアピールしていきます。

(2)第33回トヨタ総行動の具体的なとりくみ(詳細は資料集参照)

日時  2月11日(土)
場所  豊田市内・白浜公園(集会会場)
行動  ① 駅頭宣伝
    ② 市民宣伝
    ③ 中小企業アンケート配布
    ⑤ 12国民春闘トヨタ総決起集会
    ⑥ 市内デモ行進

6.12国民春闘「2.23地域総行動」のとりくみ

(1)2.23地域総行動の意義と情勢

 ① 2月23日は、通常国会が開催され、「税と社会保障」、「労働者派遣法改悪」、「国家公務員賃金削減法案」など重要法案が目白押しの時期です。これらの課題を前面に打ち出す宣伝を強化することが求められています。賃上げ・社会保障課題(医療・介護、年金、保育など)などで、広く県民にアピールしていきます。

 ② 12国民春闘を早い段階から盛りあげるため、「25歳・単身者 300万円の賃金はあたりまえ」

のスローガンを前面にかかげ、賃上げの世論を結集していきます。賃上げは日本経済の内需拡大につながるという「社会的大義」をもっています。このことを広く未組織労働者にも訴えていきます。

 ③ 「税と社会保障一体改悪」「TPP参加」反対などの要求課題をかかげてアピールします。ディーセントワークの確立をめざすたたかい、雇用の拡大、長時間労働・サービス残業根絶の課題を前面に打ち出します。

(2)具体的な行動

 ① 早朝宣伝

  • 地域内のすべての駅頭を基本に、ビラ・ティッシュの配布をおこないます。
  • メインの駅頭宣伝を決め、そこではハンドマイク・宣伝カーで音による宣伝を実施します。この場合、一定の人数の確保、のぼり(全労連作成)などをたて、目に見える宣伝をおこないます。
  • ビラ・ティッシュの配布枚数を確認します。

 ② 昼の行動(選択)

  • 昼の行動が困難になっていますが、可能なかぎり追求します。
  • 行政機関・経営者団体(商工会議所・商工会など)への要請行動を実施します。
  • TPP反対でJAなどに共同のよびかけ、学習会などを計画します。
  • 中小企業アンケート(名古屋市外)の実施。この場合独自に中小企業集積地を対象に一定の枚数を配布します。
  • 労組訪問(課題ごとの署名への協力要請)を実施します。

 ③ 夜の行動(選択)

  • 決起集会の開催。とくに消費税や社会保障改悪などの課題で他団体にもよびかけます。なお、消費税の課題では愛商連に各地の計画がたてられています。共同のとりくみを追求します。
  • 学習会(春闘、税と社会保障、TPPなど)、要求交流会などを実施します。

 ④ ビラは2月15日に地域労連必着で作成します。

(3)自動車パレードのとりくみ

 ① 大企業の社会的責任と規制緩和反対にむけて自動車パレードをおこないます。
   日時  2月19日(日)10:00~ 稲永埠頭で出発集会後、栄方面へ

7.「さようなら原発in愛知 3.11明日につなげる大集会」の成功を

 ① 全労連は12年3月11日を「東日本大震災」1周年として、3月11日に全国的な行動をよびかけています。愛労連は3月11日に久屋市民広場で「震災復興・脱原発」を中心的課題にした県民大集会にとりくみます。また団体の諸要求(消費税や社会保障、TPP)などで参加できる形態(ブースなど)を実行委員会で検討し、久屋市民広場を埋めつくす参加で成功させます。

日時  12年3月11日(日)午前11:00~15:00程度
場所  久屋市民広場(松坂屋東側)
内容  関係団体と協議して確定します

 ② 実行委員会の経過と議論の内容、とりくみの具体化は別紙参照。

8.東日本大震災の復興をめざすたたかい

(1)被災者・被災地中心の復興、地域の防災計画見直しを

 ① 震災復興では、政府・財界の構想改革による大規模開発の推進、道州制導入にむけたうごきを許さず、農林水産業の再建、県民のくらし再建を軸にした復興をもとめ、全国的な提起にこたえとりくみを具体化します。

 ② 宮城県などの「復興特区・水産特区」など大企業の参入を求める規制緩和に反対していきます。

 ③ 東海・東南海・南海地震の連動による地震の確立が高まっています。地域・自治体の防災計画を「マグニチュード9」に対応するよう見直しを求めていきます。

(2)被災地の大量解雇に反対するたたかい

 ① 震災を口実にソニー期間従業員の大量解雇、また愛知県に本社のあるコロナでのアルバイト568人の解雇など、大量解雇があいつぎました。解雇された仲間はソニー労組に結集して解雇撤回を求めてたたかっています。コロナの労働者は全国一般に結集して地位確認・未払い賃金などで労働審判を申立てました(11人。その後61人が予定)。引き続き積極的な支援をおこないます。

 ② 愛労連としてもこうした解雇を許さず、連帯したとりくみをすすめていきます。

 ③ 全労連や東日本大震災被災3県の県労連とも協議し、カンパ活動等にとりくみます。

9.平和・民主主義のたたかい

(1)憲法審査会の策動を許さないたたかい

 ① 改憲原案の審査権限をもつ衆議院憲法審査会が昨年11月17日に開かれました。民主党は「震災の復旧復興が最優先で、(憲法論議は)優先順位として相対的に下がるが、必要ないことはない」(山花郁夫氏)とする一方、自民党やみんなの党などからは改憲議論を開始することを求める意見がでました。自民党の中谷元氏は、選挙権を18歳に引き下げる法改正など、改憲手続き法が定める検討課題と、憲法審査を並行して論議するよう主張しました。

 ② 憲法審査会は改憲を求めていない国民の世論や野党の反対を押し切り、たび重なる強行採決によってつくり上げられたものです。審査会を動かそうとする策動を許さず、広く訴えていきます。

 ③ 衆参国会議員の定数削減に反対するとりくみをすすめます。民自公は、衆参国会議員のうち比例部分の削減を主張していますが、最大の問題は小選挙区制であり、これを廃止して民意を正確に反映できる比例代表制に是正するよう求めていきます。

(2)普天間基地の辺野古移設反対、小牧基地の機能強化に反対

 ① 野田政権は、沖縄普天間基地の辺野古移設に執着し、沖縄県民の怒りをよんでいます。その普天間に事故が多発している「垂直離着陸機・オスプレイ」の配備を2012年6月に配備することまで合意しました。もっとも危険な基地である普天間に騒音や墜落の危険性の高い「オスプレイ」の配備に反対し、普天間基地の撤去・辺野古移設に反対する沖縄県民と連帯してたたかいをすすめます。

 ② 沖縄北部東村・高江地区へのヘリパット建設の強硬に反対し、果敢にたたかっている高江住民との連帯、支援を強めます。

 ③ 沖縄県宜野湾市の市長選挙が2月5日告示、11日投票でたたかわれます。安里市長の病気辞任により、前市長の伊波洋一さんが立候補します。伊波洋一さんをなんとしても勝利させるため支援を強めます。

 ④ 小牧基地の空中給油機に関する「覚書」の撤廃などを求めて、防衛省などへの要請を強めていきます。小牧基地の撤去を視野に入れたとりくみを強化します。

(3)3.1ビキニデーへの参加、脱原発署名の推進、核兵器廃絶署名の推進

 ① 12年3.1ビキニデーへの参加をよびかけます。

 ② 脱原発署名は、それぞれの宣伝行動でも集約は順調にいっています。一方、従来の「核兵器廃絶署名」は、単産でも地域でも〝後景〟に追いやられている感があります。あらためて、職場・地域で「核兵器廃絶」署名を積極的にとりくむこととし、夏の原水爆禁止世界大会など、節目をもうけて国連に退出していきます。

 ③ 愛知県原水協の総会への参加をよびかけます。

日時  2月19日(日)10:00~
場所  民主会館(新栄)
※高草木日本原水協代表理事の講演、年間方針の確定等

(4)宣伝活動の妨害に反対するとりくみ

 ① 最近、街頭での宣伝活動に対する警察の妨害行動が目にあまります。言論・表現の自由への挑戦であり、これを許さないたたかいが必要です。

 ② 宣伝活動学習交流会を開催し、妨害に対する対処などについて学びます。

日時  2月25日(土)10:00~
場所  労働会館本館

10.組織強化・拡大について

(1)秋の組織拡大の到達と春の月間の設定

 ① 愛労連は「秋の組織拡大月間」としてとりくんできました。単産・地域の奮闘で12月末現在669人があらたに加入しました。職場における拡大では、愛高教や医労連などが奮闘しています。非正規労働者の拡大も自治労連などが奮闘しています。また、きずなは組合員拡大と同様、機関紙読者拡大を位置づけ、これまで機関紙読者51人、組合員8人、共済加入でも増やしています。2011年6月末現在の組合員数は対前年比347人減であり、あと一息で増勢に転じるまでにいたっています。引き続き単産・地域での拡大を追求します。

 ② 春闘期における組織強化・拡大の課題は、要求討議をとおして職場活動の活性化や未加入者を迎えいれることです。このことを単産として目的意識的に追求していきます。

 ③ 秋の到達をふまえ、春の組織拡大月間について3月~5月を「組織拡大月間」とし、3000人目標でとりくみます。とくに新規職員の獲得のために奮闘します。

 ④ 現在、東三河と尾東労連で準備をすすめている「総がかり作戦」を他の地域でも実施できるようにします。

 ⑤ フレッシャーズ宣伝を4月2日(月)に8:00~・伏見ほかで実施します。

(2)組織強化拡大検討委員会の「答申」とその取扱いについて

 ① 組織強化拡大検討委員会の答申がありました(別紙)。愛労連はこれをうけて7月22日の定期大会に具体的なとりくみが提案できるよう幹事会として議論をおこなうこととします。また、各単産・地域労連の方針討議にもいかせるよう、早めに(3月くらい)予備提案していくこととします。

 ② 答申の(1)~(5)についてはこれをもとに討議し、評議員会までに意見を集約して大会議案として提案します。(6)の財政をともなう部分については「組織財政検討委員会」を設置し、2013年度以後の予算の枠組みについての議論をおこない、幹事会に対応案を提案することとします。

 ③ 組織財政検討委員会は以下の委員(案)で構成します。

委員長  伊藤慎次(自治労連県本部委員長)
委 員  国公、愛高教、医労連、建交労、名中センターから選出

(3)セミナーの実施など次世代育成に力を入れる

 ① 「愛労連特別セミナー」を5月11日(金)~13日(日)に設定し、実施します。このセミナーは幹部養成を目的とし、単産・地域労連のすいせんをもとに、参加者を決めて2泊3日を基本に、全体で30人程度の規模でおこないます。そのための準備を早急にはじめます。

 ② 「第3回愛労連セミナー」を3月~6月の間に、尾張地域で開催することにします。

◇第1回 3月17日(土)13時半~17時 レディヤンかすがい ※オリエンテーションあり
◇第2回 4月14日(土)14時~17時
◇第3回 5月19日(土)14時~17時
◇第4回 6月16日(土)14時~17時

 


 

[1] 95年に旧日経連が発表した「新時代の日本的経営」は、雇用を3つのグループに分割。「①長期蓄積能力活用型グループ、

 ②高度専門能力活用型グループ、③雇用柔軟型グループ」。これ以後、04年「労働者派遣法・製造業派遣」の規制緩和とかさなり、非正規労働者は急増した。その翌年の96年には労働者派遣法が改悪され、対象業務が26業務に拡大された。さらにその3年後の99年、派遣法の対象業務は原則自由化され、04年には製造業派遣が〝解禁〟された。

[2] 警察庁の「自殺の概要資料」によると2010年で就職活動を理由にして自殺した人が46人にも達していることがわかった。

[3] 労働総研「雇用と就業の確保を基軸にした、住民本位の復興-東日本大震災の被災者に有期と展望を」という提言(4月22日)のなかで、資本金1億円以上の企業の内部留保は317兆円、その4.7%を活用するだけで総額15兆円の無利子復興国債の財源が生まれるとしている。

[4] 中小事業所の減少に伴い、「小規模」では従業員数も県-10.1、名古屋市-10.8と大幅に減っている。

[5] 10年1月、辺野古沖での新基地建設がねらわれている名護市の市長選挙でこれに明確に反対する稲嶺市長が誕生。2月には沖縄県議会が「普天間基地の閉鎖・返還」「国外・県外移設」の決議を全会一致で採択。4月25日にはこの決議の実行を求め、県議会全会派と41自治体首長、県知事も参加した県民大会に9万人を超す県民が参加した。9月の名護市会議員選挙では新基地反対派が多数を占めた。さらに11月の宜野湾市長選挙で閉鎖・撤去を求める安里猛新市長が誕生。県知事選挙でもイハ洋一さんが30万票を獲得する大健闘をした。こうした県民世論の高まりのなか、仲井真知事も「普天間基地の県内移設はムリ」だといわざるを得なくなっている。

 

[6] アメリカ政府の文書 -「日米投資イニシアティブ報告書06」-(3)労働法制

米国政府は、労働移動を促すことが組織の価値の極大化を図る上で重要であると指摘し、この観点から次の四点を挙げた。

第一に、米国政府は、確定拠出年金制度の拠出限度額の引き上げ、給与天引きではない従業員拠出を認めること、及び従業員が最適な投資戦略を決めることや適時、ポートフォリオのリバランスなどの適切な行動を確保することを助けるために、投資助言サービスを任意で利用できることを認めるよう要請した。米国政府はこれらの変更が確定拠出年金制度をより魅力的なものにし、従業員、事業主双方に利益があると述べた。

第二に、米国政府は、解雇紛争に関し、復職による解決の代替策として、金銭による解決の導入を要請した。

第三に、米国政府は、労働者の能力育成の観点から、管理、経営業務に就く従業員に関し、労働基準法による現在の労働時間制度の代わりに、ホワイトカラーエグゼンプション制度を導入するよう要請した。

第四に、米国政府は、労働者派遣法による規制については、限られた時間の仕事や職場(選択)の自由を希望する者を含む労働者により多く雇用の機会を提供する必要があるとの観点から、これを緩和すべきであると指摘した。

[7] ① 05年の保険業法〝改正〟で、共済事業を保険業として規制されることになった。営利企業である保険業と助け合いとしておこなわれてきた自主共済を同列視し、資本金や準備金、保険募集人などを求めている。この前段には、アメリカの執拗な介入がある。94年・96年に「日米保険度合意」がむすばれ、03年に米国企業約1000社で構成する「在日米国商工会議所(ACCJ)」は05年の法改正にむけて「無認可共済(自主共済)は、遅滞なく金融庁および保険業法の管理下におかれるべきである」との意見書を金融庁に提出している。こうした米日政府の自主共済つぶしに、国民の反対の声が急速に広がり、「共済の今日と未来を考える懇話会」が活性去れ、当時245の自治体でも「自主共済を守れ」の意見書が可決されている。

 ② しかしアメリカの介入はとまったわけではない。11年になっても「アメリカ通商代表部」の「外国貿易障害障壁報告書」でも「共済は金融庁による監督下おかれることを含め、(民間保険会社と)同じ規制水準・監督に服すべきだ」などと主張している。こうした同行為からみればTPP参加した場合、現在「例外扱い」とされている。労働共済、JA共済、PTA安全互助会なども保険業とみなされることになるのはまちがいない。

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