【談話】「28円の引き上げ」では、非正規労働者の生活改善にほど遠い

2021年8月5日
愛労連(愛知県労働組合総連合)
事務局長  竹内 創

1.8月5日に開催された第502回愛知地方最低賃金審議会は(以下:審議会)、2021年度最低賃金について(本年10月1日施行)、目安通り28円引き上げる答申を愛知労働局長に対して行った。時間額は955円となる。私たちは、直ちに1,000円以上、誰もが「8時間働けば普通に暮らせる」最低賃金額として1500円への引き上げを求めてきたが、1,000円までにも45円の開きがある。最低賃金の影響を最も受ける非正規労働者の生活改善には、ほど遠い引き上げ額であると言わざるを得ない。

2.これまで、全労連と愛労連など全国19都道府県の地方組織は、「最低生計費試算調査」にとりくみ、その結果から1人暮らしの25歳単身者が借家(1K)で暮らすには、全国どこでも月額24万円(時給1500円)以上必要であることを明らかにしてきた。「8時間働けば人間らしく暮らせる」ための最低金額である。全労連は5月、「全国一律最低賃金制度の実現を求める署名」16万筆を国会に提出し、与野党の党派を超えた110名もの国会議員が紹介議員となった。愛労連も全国一律最低賃金制度の確立とともに、①愛知県最低賃金を1,500円に引き上げる、②中小企業への財政措置、③愛知地方最低賃金審議会の専門部会の公開、④審議会で非正規労働者の意見陳述を求める署名にとりくみ、10,464筆の署名を愛知労働局長と審議会会長に提出した。県内100カ所を超える駅頭などでの宣伝行動も展開してきた。引き上げを求める要請文や意見書も積極的に提出した。

3.現局面の経済悪化は、コロナ禍以前からの実質賃金の低下、消費税の引き上げなどによる個人消費の落ち込みなどが主な要因である。一方、コロナ禍にあっても2020年度の税収は過去最高となり、なかでも法人税の伸びが顕著で、大企業の内部留保は膨らみ続けている。それらを活用した公正な取引の実現と中小企業への支援を強化すれば、最低賃金の大幅な引き上げや全国一律制度の確立は十分に可能であり、そのことが、コロナ禍の経済悪化から脱して、地域循環型経済をつくるベースになると確信する。

 最低賃金はすべての労働者の賃金と生活にかかわり、日本経済の行方を左右する時の政府の重要な施策である。コロナ禍でその重要性がいっそう高まっている。政府に対し、最低賃金の引き上げが可能となる中小企業支援策をいますぐ具体化するよう求める。

4.2021年の諸外国における最賃の引き上げ状況は、イギリスが2.2%(1,359円)、ドイツ1.6%(1,239円)、フランス0.99%(1,338円)。米国もバイデン大統領が政府契約の企業の最賃を15㌦に引き上げる大統領令に署名したように、各国とも最賃額が1,300円~1,500円になっている。世界の流れは、最賃額を大幅に引き上げる方向である。日本は世界に大きく遅れており、1,000円にも届かない現状を直ちに打開しなければならない。

5.愛知の審議会では、すでに全国28府県で実施されている審議会での意見陳述も行われず、実質的な審議がされる専門部会も非公開である。愛労連はせめて最賃額の影響を直接受ける非正規労働者の意見陳述の実現を何度も申し入れたが、実現していない。わずか10分、15分の意見陳述がなぜできないのか。公的機関である審議会が県民に開かれた民主的な場になるようにあらためて要求する。

6.愛労連は引き続き、コロナ禍だからこそ最賃1,500円と全国一律最低賃金制度の実現、中小企業支援の抜本的強化と公正な取引の実現のためにいっそう奮闘する決意である。

 以上

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