【談話】「多様性」を受け入れない愛知地方最低賃金審議会委員の任命に抗議する

 4月26日、愛知労働局長は第50期愛知地方最低賃金審議会委員の任命結果を公表した。任命された委員は、これから任期の2年間、愛知県内の労働者の賃金、とりわけ非正規労働者の賃金(時間給)に直結する最低賃金額を審議する重要な役割を担うことになる。

 愛労連は、3月25日に愛知労働局長に対し「多様性を重視し、県民に期待され活発な議論が行われる審議会に」なるよう要請を行い、次の7項目を求めた。
 ①.女性の審議会委員を7名以上とし、労働者代表委員については3名以上とすること。
 ②.労働者代表委員に非正規労働者を任命すること。
 ③.労働者代表委員に中小企業で働く労働者を任命すること。
 ④.労働者代表委員に「医療・福祉」労働者を任命すること。 
 ⑤.非連合の委員を任命すること。
 ⑥.2年間の任期をまっとうできる労働者代表委員を任命すること。
 ⑦.公益代表委員に最低賃金をはじめ労働問題(労働者の生活実態も含む)に精通した専門家を任命すること。
 そして、愛労連から5名(男性3・女性2、非正規2、医療・福祉労働者2)を推薦した。
 任命された委員名簿を見ると、労働者委員はこれまでと同様、製造業と商業サービス分野の連合系大企業労組役員だけを任命した。昨今、多様性は「異なる背景や特徴を持つ人々が共存し、互いに尊重しあうことで、社会の豊かな発展をもたらす」とされ、社会全体が真剣にとりくむべきテーマであるにもかかわらず、連合系労組役員のみに独占させたことは、時代錯誤の判断である。
 また、これまでの審議の傍聴をふまえ「5名の労働者委員のうち、発言するのはほとんど1名(昨年は2名)。労働者の代表として委員に任命され、報酬をもらって審議会に参加しているのに、一言も考えを述べないのでは県民の理解は得られない」とし、活発な審議を行う上でも「多様性の重視」を強調してきた。
 さらに、公開される審議は短時間で、大半が非公開で議事録もない「二者協議」であり、具体的な審議は闇の中であった。今回の任命では、残念ながら「豊かな審議」は期待できず、「闇審議の継続」の不安が拭えない。
 加えて、県内の企業のほとんどが中小企業であること、県内労働者の約35%が非正規労働者であること、医療・福祉分野で働く労働者数は製造業、小売業に次ぐ規模であることから、この分野からの当事者の任命が必要としたが、いずれも受け入れられなかった。女性委員も委員全体で15名中6名で国が求める水準の最低でしかない。

 物価高騰と実質賃金の低下が続くなか、石破首相は「賃上げこそが成長戦略の要」とし、「最低賃金を着実に引き上げ、2020年代に全国平均1500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続ける」と述べている。これまでにも増して「最低賃金引き上げ」の審議が県民から注目されている。
 2カ月ほどで愛知地方最低賃金審議会が開催される。愛労連の要請項目は実現しなかったが、任命された各委員が、最低賃金法第一条にある「労働者の生活の安定」を基本に、公開の場で活発な審議が行われることを求める。とりわけ、正規・非正規を含む県内労働者を代表する労働者代表委員の役割と発言を注視し、今年の改訂で生活を改善できる大幅引上げを実現するために全力をあげるものである。

2025年5月4日

愛労連事務局長 竹内 創
(愛知県労働組合総連合)

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