【談話】最低賃金1,140円では生活を改善できない

全国一律制の法制化と中小企業でも大幅引き上げが可能となる支援策を政府に求める

9月8日、第523回愛知地方最低賃金審議会(異議審)が開催され、10月18日から愛知県の最低賃金を時間給1,140円とすることを決定し、愛知労働局長に答申した。

この審議会は「異議審」と呼ばれ、8月21日付けで労働局長が通知した「愛知県最低賃金の改正決定に係る愛知地方最低賃金審議会の意見に関する公示」にもとづき、9月5日までに提出された団体・個人からの異議申出についての審議が行われたものである。

「異議申出」は近年最高の60件(うち一件は使用者団体)に及んだ(昨年は54通)。これは、実質賃金が低下し、飲食料品の値上げが10月は3千品を超えるなど、生活不安が背景にある。

主な内容は、①答申額1,140円では足りないこと、②全国で8割を超える審議会が中央審議会の目安を上回る答申を出していること、③会長が愛知県知事の「目安額を上回るコメント」を無視したこと、④事務局が採用した愛労連の最低生計費資料の説明や低賃金なケア労働者・非正規労働者などの意見陳述がなされていないこと、⑤金額審議は非公開・議事録なしの休会中「協議」が中心で闇の中であること、⑥8.21答申文に「経過・理由・根拠」の記述がないこと、⑦最高裁で違法とされた生活保護費と比較していること、⑧国と県に対し中小企業支援を求めるものである。

この異議申出の内容について、労働者委員から「(異議書の内容は)方向性としては同じもの。過去最高の引上げは前向きに受け止めるが、主張してきた金額に届かなかったのは非常に残念。39道府県で目安を超える状況は大きな波。県知事の(目安額を上回る)コメントに審議会としてコメントを出した方がよいのではないか」などとの発言があった。特に「知事発言」(8月20日記者会見)に対しては、多数の異議申出にもあったが、会長や公益委員からは8月21日の審議会につづき、一言も発言がなかったことは不誠実の極みである。

使用者委員は「(多くの声が寄せられたことは)最低賃金への関心の高さを表している。労働者側からの申出で中小企業支援の重要性が語られたことに感謝する。一部地方では発効日を3月にする動きもあるが、それでは(効果も)半減する。(発効日遅らせず)いち早く生活の安定につなげることが重要ではないか」と発言したが、発効日を逆手にとって引上げ額を抑制すべきではない。

 63円の引上げは、目安通りであるが過去最高であること、愛労連が公表した最低生計費試算調査結果が初めて審議会資料として採用されたこと、愛知審議会が最短のスケジュールで発効日を決めたことは評価する。しかし、「今すぐ1,500円」の要求からすればほど遠く、生活苦に追い込まれている労働者の暮らしを改善するには足りない。

中小企業支援は重要である。助成金など支援策の使い易さを進めるとともに、国や県に対して、中小企業への社会保険料減免や全国で広がっている賃金を上げる企業への支援を求めたい。いまだ200円以上の地域間格差が残り、発効日が全国で半年近くも差がある事態を解決するには全国一律最低賃金にするしかない。審議会、労働局ともにこうした要望を上げるべきである。

愛労連は、昨年秋から署名や宣伝活動とともに、労働局・審議会・県知事への要請、昨年大幅引き上げを後押しした徳島県庁からの学習、近年では最高となった意見書・異議書の提出運動にとりくみ、大幅引き上げの必要性を世論化してきた。10月18日の発効日に新最低賃金額の周知と「今すぐ1,500円、めざせ2,000円」を求める宣伝を行う。10月から全国一律最低賃金制への法改正を求める署名活動もスタートする。非正規労働者・ケア労働者をはじめ、すべての労働者の大幅賃上げ・底上げで、生活の安定を求める労働者・県民の声に応えるため、ただちにとりくみを開始する。

以上

2025年9月9日

愛労連事務局長 竹内 創
(愛知県労働組合総連合)

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