~高市早苗新総裁「ワークライフバランスという言葉を捨てる」発言の撤回を求める~
10月4日、自民党新総裁に選出された高市早苗氏は「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます」、「働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」と会見で発言しました。
「いのちより大切な仕事などない」
愛労連はこのスローガンを掲げ、大切な家族を過労死等(過労自死を含む)で失った遺族のみなさんと連携しながら、「過労死NO!」の運動をすすめてきました。しかし、今もこの国では“過労死”等が止まず、尊い労働者のいのちと大切な家族の生活が奪われ続けています。
多くの労働者の犠牲と家族に苦悩を強いたことを悔いあらため、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる“過労死のない社会”の実現に寄与することを目的として、2014年11月、過労死等防止対策推進法(以下、推進法とします)は全会一致で成立しました。
いうまでもなく「ワーク・ライフ・バランスの実現」は過労死防止に欠かせないテーマのひとつです。ゆえに、国は労働時間等設定改善法を定め、労使がみずから働きやすい環境の整備に努めるようガイドラインで促してきました。
このようなとりくみを経て、不十分さはあるものの男女共同参画社会も一定浸透しつつあります。仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会、「ワーク・ライフ・バランス=仕事と生活の調和」と「ディーセントワーク=働きがいある人間らしい仕事」の実現は、過労死等の悲劇を繰り返さないという、労働組合共通の“決意”、“願い”、“誓い”となっています。
過労死に至る要因の多くは、優越的立場を有する者からの「ハラスメント」による肉体的・心理的抑圧とされています。高市氏による一連の発言や「馬車馬のように24時間働く」とのリーダーの宣言は、それが同僚議員に向けたものであっても、それらを助長しかねない国民への過ったメッセージと受けとられても不思議ありません。
愛労連は、推進法の理念や目的を否定する時代錯誤の過った認識に基づく高市氏の発言を断じて認めることはできません。公党総裁の認識としても同様です。しかし、高市氏個人の “言論”までも否定するものではありません。ただしその人物が「行政府の長=内閣総理大臣」となる可能性を有するとなれば、見過ごすことはできません。
「行政府の長」たる者が、個人的な認識を“献身”や“美徳”のようにアピールしてしまえば、労働者のいのちと健康を守る法の理念と目的が歪められかねません。
11月は「過労死等防止啓発月間」です。
厚生労働省のホームページには、「STOP!過労死『しごとより、いのち』」と示されています。この理念をしっかり踏まえ、全ての国民のいのちを大切にする行政をすすめることこそ、「行政府の長」に求められる最低限度の資質です。
愛労連は、高市氏が推進法の理念や目的を理解していないのであれば、「行政府の長」には相応しくないと考えます。高市氏がそれを理解しているのであれば、「過労死等防止啓発月間」を前に、速やかに一連の発言を撤回し、法制定に尽力した過労死等遺族への謝罪と、「STOP!過労死『しごとより、いのち』」の理念を国民に正しく発信し、みずから『率先垂範』されることを強く求めます。
以上
2025年10月6日
愛労連事務局長 竹内 創
(愛知県労働組合総連合)