愛知県知事 大村 秀章 様
愛知県内全市町村長 様
愛知県労働組合総連合(愛労連)
議長 西尾美沙子
日頃より任命権者として、SDGsの目標達成(ジェンダー平等の実現)および会計年度任用職員の待遇改善と安定雇用に務められ、さまざまな機会を通して、国に地方の実態を発信してこられた貴職のご尽力に、こころより敬意を表します。
わたくしども愛労連は、今年も3月8日の「国際女性デー」を前に、自治体での「ジェンダー平等」の実現、「男女の賃金格差」の是正を推進・実現いただきたく、愛知県知事と愛知県内すべての地方自治体の首長のみなさまへ、緊急の要請書を提出させていただきます。
この春、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(男女雇用機会均等法)の施行から40年の節目を迎えます。それでもなお、日本のジェンダーギャップ指数は下位を抜け出せず、とりわけ、経済参画・政治参画の分野で世界標準から取り残されたままです。「あいちSDGsアクション」を掲げる愛知県の「ジェンダー格差」の状況も同様に深刻です。内閣府が2月に公表した「地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況」によれば、愛知県内の市町村で「男女共同参画宣言」を掲げているのは、江南市のみに留まっており、女性の職業生活における活躍の推進に対する意気込みが問われかねない結果です。先日、報道機関(共同通信社)が公表した都道府県別「男女の賃金格差」でも、愛知県は全国45位に沈んでいます。その背景には女性の管理職比率の低さやパートタイム比率の高さなどが影響しているとされています。まさに愛知県は「ジェンダー平等」後進県という残念な実情です。
「SDGsの目標達成」をめざす自治体として、ジェンダー平等の推進・男女の賃金格差の是正は、まさに待ったなしの課題です。自治体における「男女の賃金格差」と「不合理な待遇差」を助長しているのが「会計年度任用職員制度」です。そもそもの制度設計の不備、不適切な運用の数々が指摘されてきたこの制度も、間もなく運用開始から7年目を迎えます。わたくしどもの調査では、2025年4月1日現在、愛知県・名古屋市を含む愛知県内の自治体の半数近くで、会計年度任用職員が全職員の過半数を占めていることが明らかになりました。もちろん、その多くが女性であり、専門性が求められる恒常的な職務の場合であっても、年度ごとの契約で雇用が不安定な上、低い処遇に置かれたままです。
昨年6月、政府もこのような会計年度任用職員の実態について、「女性活躍の推進」あるいは「安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生」をすすめる上で問題があると分析し、「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)」(令和7年6月13日閣議決定)、「地方創生2.0基本構想」(令和7年6月13日閣議決定)、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」(令和7年6
月13日閣議決定)など政府決定文書の中で、「地域の中の主要な職場である自治体自身の働き方・職場改革として、会計年度任用職員の処遇改善や能力実証を経た常勤化の推進等に併せて取り組む」こと、「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を禁じる同一労働・同一賃金制の施行の徹底など非正規雇用労働者の処遇改善」を推進する方針を示しました。このことは、過去二年にわたり、わたくしどもがお願いし続けてきたことの反映であり、なにより首長のみなさま方が地方の実情を国・県に発信してこられた尽力によるものだと感謝しております。
県内自治体においても、「常勤化の推進」で先行したみよし市に続き、大府市でも保育士などを対象とする「ディスカバリー採用」がはじまりました。来年度に向けての横展開と、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消および、男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策を推進するため、さらに踏み込んだ「短時間公務員制度」の運用を期待します。
他方、現場では人材の確保や育成など、制度の限界も見えはじめています。昨年12月に全労連・愛労連が実施した「非正規公務員全国一斉なんでもホットライン」には、全国の非正規公務員から172件もの深刻な相談が寄せられました。その内容は、雇い止めやハラスメントなどに留まらず、ハラスメントを訴えても「非正規だから仕方がない」と人事担当に取り合ってもらえなかったケースなど、会計年度任用職員の人権を軽視し、まるで“もの”のように扱う自治体の対応も明らかになりました。その典型的な例を敢えてふたつあげれば、ひとつは、たとえ大量に「雇止め」を行った場合でも、法律に基づく「大量離職通知書」の届出さえ怠ってきたコンプライアンスの欠如です。そしてふたつめは、制度移行後も多くの自治体が会計年度任用職員の給与等を消耗品と同様に「物品費」として扱いつづけてきたことです。
特に強調したいのは、コンプライアンスと雇用主責任の徹底についてです。わたくしどもが入手した厚生労働省の開示資料によれば、労働施策総合推進法に基づき2025年3月に愛知県内の地方公共団体から公共職業安定所に届出された「大量離職通知書」は、僅か5件(内1件は医療厚生組合):非常勤の離職者の合計は326人に留まっています。愛知県の規模を念頭に置けば、全国242件:非常勤の離職者の合計は29,830人の届出件数:非常勤の離職者の合計等と比較しても極めて低く、県内の自治体で法違反の常態化が疑われるゆゆしきデータです。
総務省は1月23日、この典型例の是正を促す、ふたつの通知を行いました。ひとつが「大量雇用変動が生じる場合の大量離職通知書の提出の徹底について(通知)」です。この中で総務省は、厚労省から「依然として、通知書の提出を行わなかった地方公共団体や、定められている提出期限後に通知書の提出を行った地方公共団体が見受けられる」との指摘を受け、あらためて通知を行った旨を示しています。厚労省・総務省とも、法律に基づく適正な対応を行っていない地方公共団体が存在していることを認めています。
もうひとつは「令和8年度の地方財政の見通し・予算編成上の留意事項等について(事務連絡)」です。この中で、総務省は令和8年度の地方財政計画から、会計年度任用職員の給与等について、一般行政経費(単独)から給与関係経費に移し替えて計上することに留意し、自治体にも同様の対応を図ることを助言しています。わたくしどもは、会計年度任用職員の給与等が、これまで物品費として計上されてきたことが、結果として“もの”のように使い捨てても、自治体が罪悪感を抱かずに済ませられる。そんな素地を許してきた一因ではないかと考えてきました。任命権者である首長のみなさまには、このふたつの通知・事務連絡の趣旨を十分に踏まえ、自治体行政の大切な担い手であり、地域の生活者でもある会計年度任用職員の雇用と生活に、雇用主ならびに労働基準監督機関として、一層の責任を発揮いただくようお願い申し上げます。
地方自治法は「各地方公共団体における公務の運営においては、任期の定めのない常勤職員を中心とする」と原則を定めています。しかし、すでに愛知県内半数近くの市町村では有期雇用労働者である会計年度任用職員の割合が過半数に達しており、不交付団体の自治体でさえ会計年度任用職員抜きでは「公務の運営」が維持できなくなっている実態です。もはや制度設計に「立法の不作為」があるとしか説明がつきません。法の理念に沿った「公務の運営」がはかられるよう、ただちに日本労働弁護団の
「非正規公務員制度立法提言」などを参考に、立法府である国会に法改正を促すよう要望いたします。
そして、その状況に翻弄されつづけてきたのが、有期雇用労働者に適用される労働法制も適用されない会計年度任用職員の当事者であることはいうまでもありません。
愛知県内においても、全国と同様に保育職員、学校司書・図書館司書、スクールカウンセラー、相談員など女性比率が高い専門職種ほど非正規化がすすんでいます。見過ごせないのは5年以上にわたり働き続けても、いともたやすく「雇止め」されてしまう、民間有期労働者ではあり得ない「不安定な雇用」です。2024年6月、人事院は、非正規公務員の「雇用の安定」を阻害してきた(国の非常勤職員に適用していた)「公募によらない再度の任用回数上限」を撤廃し、総務省もあらためて事務処理マニュアルを改定しました。しかし、愛知県内にはその反映を拒み「雇止め」を前提とする従前通りの公募選考を実施している自治体が今も少なくありません。
この春、民間の正社員と非正規社員の不当な待遇差を禁止する「パートタイム・有期雇用労働法」の本格施行から丸5年が経過します。厚労省ではこの間の判例などを反映し「同一労働同一賃金ガイドライン」の改定を準備しています。民間の有期雇用労働者と同様に、公務の有期雇用労働者である会計年度任用職員にも、雇用形態やジェンダーの違いによる「不合理な格差」は許されないはずです。したがって、たとえ適用除外される労働法制であったとしても、その法律の目的や理念を蔑ろにするような対応は、行政として相応しくありません。
今一度、任命権者かつ労働基準監督機関の役割を負う首長(愛知県知事及び名古屋市長を除く)におかれましては、「労働基準法」及び「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(男女雇用機会均等法)はもとより、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)、「労働契約法」、「最低賃金法」、「労働施策の総合的な推進並
びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)、改正「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)、「男女共同参画社会基本法」、改正「地方公務員育児休業法」や改正「育児・介護休業法」など、法律の主旨を踏まえたコンプライアンスの徹底および「雇用主責任」の発揮をお願いいたします。
最後に、40年前に「男女平等」の実現という女性労働者の願いを受けて施行された「男女雇用機会均等法」の目的と理念を紹介します。
| (目的) 第1条 この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。 (基本的理念) 第二条 この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあつては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。 2 事業主並びに国及び地方公共団体は、前項に規定する基本的理念に従つて、労働者の職業生活の充実が図られるように 努めなければならない。 |
つきましては、一日もはやく愛知県内のすべての自治体での「ジェンダー平等」、「男女の賃金格差の是正」が実現できるよう、愛知県知事ならびに愛知県内のすべての首長のみなさまに、この法律の目的と理念はもとより、その後40年の間に新たに施行されたあらゆる法律の目的と理念にもとづく対応をもとめ、下記の内容を要請いたします。
記
1.会計年度任用職員制度の抜本的な運用の改善をはかり、「あらゆる形態の貧困をなくすこと」、「ジェンダー平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントをはかること」、「正規と非正規や男女の賃金など、あらゆる不平等を是正すること」などに真摯に取り組み、「SDGs」の目標達成を率先して押しすすめてください。
2.総務省「令和8年度の地方財政の見通し・予算編成上の留意事項等について」で示された会計年度任用職員制度の適正な運用を図るために留意する事項をふまえ財政上の措置を速やかに講じ、雇用に関わる責任の所在を明確にしてください。また、国に対しても、地方の実情に即した立法措置が速やかにはかられるよう働きかけ、自治体での会計年度任用職員の「雇用の安定」及び「処遇の改善」をすすめてください。
3.ただちに、会計年度任用職員の「公募によらない再度の任用上限回数」をなくし、「雇用の安定」をはかってください。また、行政サービスの持続的かつ円滑な提供を妨げる機械的な「公募」による「雇止め」などが生じることがないよう、2025年8月に改訂された総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル」や総務省通知「会計年度任用職員制度の適正な運用等について」、人事院「期間業務職員の採用等に関するQ&A」などを十分に踏まえ、雇用主責任を発揮してください。
4.やむを得ず、会計年度任用職員の「再度の任用を行わない」場合であっても、当該職員が次年度に向けて求職活動を行うこととなること等を踏まえ、任期終了日までに十分な時間的余裕をもって本人に通知するとともに、「円滑な再就職の促進のための助成及び援助」、「大量の雇用変動の届出」等、直近の総務省「大量雇用変動が生じる場合の大量離職通知書の提出の徹底について(通知)」(令和8年1月23日)を参考にコンプライアンスの徹底を図り、労働施策総合推進法と関連省令に沿った雇用主としての責任ある対応をしてください。また、地方人事委員会が設置されていない自治体の首長におかれましては、みずからが労働基準監督機関としての役割も負っていることを認識され、「労働者の権利保護」の立場で適切に対応ください。
5.労働基本権の制約を受けているすべての会計年度任用職員に、地方公務員法に定められている給与の基本原則である「情勢に適応」した給与改定(賃上げ)を実施してください。当然、給与改定の実施にあたっては正規職員との均等を考慮して「4月遡及」の対象としてください。また、それらが確実に処遇改善につながるよう、勤務時間数や勤務日数で調整をはかるなど不適切な対応は行わないでください。
6.会計年度任用職員に対する期末・勤勉手当の支給にあたっては、法改正の主旨を十分に踏まえ、以下のような「適正な運用」を阻害する対応は厳に慎んでください。
① 再任用職員との均衡を理由に勤勉手当の支給月数(割合)などについて抑制を図ること
② 勤勉手当を支給する一方で、報酬や期末手当、勤務時間数などについて抑制を図ること
③ 勤勉手当の対象から外すことを意図して勤務時間数を抑制すること
④ その他、法改正の主旨を踏まえない不適切な対応
7.自治体の人材育成と人材確保、地方自治の維持発展に責任を持ち、行政の持続性を担保にするため、比較的長期にわたって継続される見通しのある職、専門性が求められる職、フルタイムやそれに近い勤務時間の職の会計年度任用職員については、速やかに本人の申し出に沿った常勤化を図り、正規職員への登用をすすめてください。その際は自治体での経験を応募要件とするようにしてください。
8.女性活躍推進法及び地方公務員育児休業法改正の主旨等を踏まえ、多様で柔軟な働き方の実現、仕事と育児・介護等が両立できる環境の整備等により、ライフステージに応じて、雇用形態によらず全ての職員(女性に限らず)が希望する働き方を選択できる自治体を実現してください。
① すべての職員を対象とする短時間公務員制度の導入の検討をすすめること
② すべての職員を「家庭と仕事の両立支援」に関する制度の対象とすること
③ 育児短時間勤務や部分休業等の運用にあたっては、法律・条例に基づかない“独自の判断基準”の強要や申請を不受理とする対応など、職員からの適正な申請を妨げる行為を排除すること
④ すべての職員を対象とし、職場におけるヘルスリテラシー向上のためのとりくみや、女性が相談しやすい体制づくり、休暇制度の充実を図ること
⑤ 以上の項目について、公的部門として民間に先駆け率先垂範すること
以上
【参考資料】(URL)
参考1)【内閣官房】新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版(2025年6月13日閣議決定)別添①
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/ap2025.pdf
参考2)【内閣府】経済財政運営と改革の基本方針2025について(2025年6月13日閣議決定)別添①
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/2025_basicpolicies_ja.pdf
参考4)【総務省】地方公共団体における男女間給与差異の要因や課題の把握・分析及びその結果を活用した女性活躍・働き方改革に関する取組の一層の推進について(2025年4月4日)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001003260.pdf
参考5)【総務省】会計年度任用職員制度に係る事務処理マニュアルの改訂について(通知)(2025年8月28日)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001027768.pdf
https://www.soumu.go.jp/main_content/001027880.pdf(事務処理マニュアル)
参考6)【総務省】「会計年度任用職員の経験を活かす採用試験等の取組事例集」の送付について(2025年9月30日)※別添②
https://www.soumu.go.jp/main_content/001033415.pdf
参考7)【総務省】会計年度任用職員制度の適正な運用等について(通知)(2025年12月25日)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001048563.pdf
参考8)【総務省】令和7年度会計年度任用職員の施行状況等に関する調査結果について(2025年12月25日)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001048564.pdf
https://www.soumu.go.jp/main_content/001048565.pdf
https://www.soumu.go.jp/main_content/001048566.pdf
参考9)【総務省】令和8年度の地方財政の見通し・予算編成上の留意事項等について(事務連絡)(2026年1月23日)※別添③
https://www.soumu.go.jp/main_content/001053118.pdf
参考10)【総務省】大量雇用変動が生じる場合の大量離職通知書の提出の徹底について(通知)(2026年1月23日)※別添④
参考11)【厚労省】雇用形態又は就業形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けた 取組の強化について(報告)(2026年3月2日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001629296.pdf
参考12)【内閣府男女共同参画局】女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の改正等について(地方公共団体向け)(2026年1月)
https://www.gender.go.jp/policy/suishin_law/horitsu_kihon/pdf/260114_03.pdf
参考13)【内閣府男女共同参画局】地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況(令和7年度)(2026年2月)※別添⑤
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/suishinjokyo/2025/pdf/rep/00_20260226.pdf
参考14)【人事院】令和8年4月からの「年次休暇の単位」及び「非常勤職員の休暇制度」の見直し(概要)
https://www.jinji.go.jp/content/000014794.pdf
参考15)【人事院】令和7年育児や介護と仕事の両立支援制度がさらに取得しやすくなりました!(非常勤職員向け)(2025年10月改定)
https://www.jinji.go.jp/content/000006888.pdf
参考16)【厚労省】地方公共団体からの大量離職通知書の提出状況 ※別添⑥







