愛知県知事
大村 秀章 様
愛知県労働組合総連合(愛労連)
議 長 西尾美沙子
長引く物価高騰のもと、日本の実質賃金は4年連続のマイナスとなっており、県民生活を改善するためには、物価上昇を上回る賃金引上げが極めて重要となっています。とりわけ最低賃金の引上げは、多くの非正規労働者の賃金に直接波及する重要な施策です。
「あいちの就業状況」(2025年10~12月)によれば、愛知県内で働く非正規の職員・従業員は137万人を超えています。最低賃金の引上げは、非正規労働者のみならず、若年労働者など賃金水準の低い正規労働者の賃金にも好影響を与えるものです。
労働運動総合研究所(労働総研)による「最低賃金を1500円に引き上げた場合の経済効果試算(2023年)」では、愛知県内の生産誘発額は約1兆1359億円、付加価値誘発額は約6682億円、雇用者数は約6万7100人の増加が見込まれています。さらに税収増は約1296億円(国795億円、県501億円)と試算されており、最低賃金の引上げは県内経済にも大きな効果をもたらすものとされています。
2025年8月19日には、知事が経済再生担当大臣と「最低賃金引上げに関する意見交換」を行い、「目安額を超える引上げが望ましい」との考えを示されました。県民生活と県経済に責任を持つ立場として、最低賃金の引上げに対する明確な姿勢を示されたものとして歓迎するものです。
一方、愛知県では若者の東京圏への流出が続いています。東京の最低賃金は1226円、愛知県は1140円で86円の差があり、月150時間の労働とすると月額で約1万2900円、年間では約15万4800円の格差となります。全国どこでも労働者の最低生計費(月額27万円・時給1800円)に大きな差がない中で、この格差は生活格差に直結するものです。転出超過は20代から30代の若者に集中しており、賃金格差もその一因となっていると考えられます。
また、「あいちの就業状況」によれば、「医療・福祉」分野の就業者は56万5000人と主要産業の一つであるにもかかわらず、2025年度の賃上げ水準(1人平均賃金の改定額)は全産業平均を100とした場合41にとどまっています。最低賃金近傍で働く労働者が多い分野であり、離職の背景には低賃金があると考えられます。県民のいのちや健康、福祉を支える人材確保のためにも、労働者の最低生計費に見合った最低賃金の引上げは極めて重要です。
さらに、2026年1月27日に開催された「愛知県公契約に関する協議の場」において、愛知ビルメンテナンス協会の吉田治伸会長が「最低賃金について、ハワイは2200円、ドイツは2300円、日本より韓国の方が高い。ベトナムの技能実習生の若い人も日本に来なくなっている。日本も最低賃金を2000円程度にしてほしい」と最低賃金の大幅な引上げの必要性を指摘されました。愛知県には約21万人の外国人労働者がおり、その多くが地域経済を支える重要な担い手となっていますが、国際的な人材確保の観点からも賃金水準の引上げが求められています。
一方で、日本の企業の大多数を占める中小企業・小規模事業者にとって、最低賃金の引上げに対応するための行政による支援は不可欠です。これまで愛知も含め全国の地方最低賃金審議会が、国に対し答申や付帯決議などで中小企業に対する支援強化を求めていますが、地方では国任せにせずに、岩手、山形、茨城、群馬、山梨、長野、富山、福井、広島、徳島、佐賀、大分の各県(全労連調べ・2025年8月現在)が中小企業への独自助成を実施しています。また、新たに鳥取、奈良、秋田、石川の各県知事などが中小企業支援策やそのための予算確保を表明するなど、地方から賃金を引き上げる取組が加速しています。2024年改定で「徳島ショック」と呼ばれた徳島県では、賃上げ支援と一体的に最低賃金の引上げを進めた結果、実質賃金が改善する一方で倒産の増加や求人の減少などはないと報告されています。地域経済を支える中小企業が持続的に賃上げを行えるよう、自治体としての積極的な支援が求められます。
以上のことから、最低賃金の大幅な引上げによって県内労働者の生活を改善するため、下記の事項について要請いたします。
記
1.愛知地方最低賃金審議会に対し、労働者の最低生計費に見合った最低賃金水準をめざし、「目安額」を上回る答申が行われるよう、知事として積極的に意見を表明されること。
2.中小企業・小規模事業者が最低賃金引上げに伴う賃上げを円滑に実施できるよう、県独自の支援策を講じられること。
以上






