愛知県最低賃金を1800円以上に引き上げるために、生計費重視・開かれた審議、中小企業支援を国に求めること及び早期発効を求める要請書

愛知地方最低賃金審議会
会長 中山 徳良 様

愛知労働局
局長 小林 洋子 様

愛知県労働組合総連合(愛労連)
議長 西尾 美沙子

 2026年度の愛知地方最低賃金審議会における審議に際し、国民の請願権に基づき、貴審議会及び貴局に対し、下記のとおり要請いたします。つきましては、本要請書を全委員に配付いただくとともに、審議においては要請事項について十分に御配慮いただきますようお願いいたします。
 また、「愛知県最低賃金を1,800円以上とし、中小企業支援を求める要請署名」(自筆・オンライン)の第一次分12,442筆及び「愛知県最低生計費試算結果(若年単身世帯)-2026年改定版-」を関係資料として提出いたします。
 貴審議会におかれましては、労働者の生活実態及び地域経済の持続的発展を十分踏まえ、開かれた審議が行われるよう、格別の御配慮をお願いいたします。

1.労働者の生計費を重視し、愛知県最低賃金を1,800円以上に引き上げること

(1)審議に当たっては、労働者の生計費を重視し、愛知県最低賃金を1,800円以上に引き上げることを求めます。

(2)最低賃金法第1条にいう「賃金の低廉な労働者」及び同法第9条にいう「労働者の生計費」の解釈についてお示しください。あわせて、その内容を審議にどのように反映させるべきなのか説明を求めます。

(3)最低賃金法第9条にいう「労働者の生計費」について、令和7年8月21日付けの「答申」資料には「生活保護費:18歳~19歳・単身世帯」が付されていました。「労働者の生計費」は「単身世帯」の生計費を前提としていると理解して差し支えないでしょうか。

【理由及び背景】

(1)時給1,800円以上の根拠は、「愛知県最低生計費試算調査結果(若年単身世帯)-2026年改定版-(愛労連)」(以下:最低生計費調査結果)によるものです。本日、最低生計費調査結果を提出いたします。同調査では、月額で28万3,284万円(税・社会保険料込み)、時間額で1,889円が必要であるとの結果が示されています。本日午後には、県政記者クラブにおいて会見を行い、公表する予定です。また、関連資料として、2026年2月に実施した家計簿調査の集約一覧(単身世帯分)も添付いたします。
 日本の最低賃金は、世界的に見ても低く、2025年8月時点で米国ワシントン州2,456円、オーストラリア2,446円、イギリス2,471円、フランス2,056円、ドイツ2,406円とされる欧米諸国に大きく後れを取っており、韓国1,123円よりも低い水準となっています。
 2026年1月27日に開催された「愛知県公契約に関する協議の場」では、愛知ビルメンテナンス協会の会長から、最低賃金について「ハワイは2,200円、ドイツは2,300円、日本より韓国の方が高い。ベトナムの技能実習生の若い人も日本に来なくなっている。日本も最低賃金を2,000円程度にしてほしい」旨の発言がありました。
 また、帝国データバンクは、5月29日に「6月の飲食料品値上げは1,078品目で前月の約13倍」と発表し、6月2日には、今年の飲食料品の値上げが2万品目を超える見通しとなったことを発表しました。2年連続で2万品目、5年連続で1万品目を超えることになります。長引く物価高に加え、中東情勢の混乱による原油高やナフサ供給不足の長期化が、経済と市民生活に影響を及ぼしています。食料品や日用品の価格上昇による家計負担増は深刻であり、とりわけ低所得労働者への影響は計り知れません。

(2)最低賃金法第1条は、「この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」と定めています。前回3月25日の要請時に「賃金の低廉な労働者」とは具体的にどのような労働者を指すのか、本省に確認してご回答いただけるとのことでした。

(3)愛知県が発表した「2025年平均 あいちの就業状況」(2026年2月27日、愛知県発表)によると、県内の非正規労働者数は135万2,000人で、労働者全体の36.5%を占め、2021年以降で最高となっています。そのうち女性は92万9,000人で、非正規労働者の68.7%が女性労働者となっています。
 さらに、今年3月に発表された「2026年の都道府県別版ジェンダー・ギャップ指数」によれば、愛知県の「フルタイムの仕事に従事する男女間の賃金格差」は全国46位であり、男女賃金格差が全国で2番目に大きい不名誉な結果となっています。月額で女性は男性より9万5,300円低い状況にあります。最低賃金の引上げは、多くの女性の賃金を底上げし、愛知県のジェンダー・ギャップ解消に資するものです。
 最低賃金の大幅な引上げは、非正規労働者(民間・公務)にとどまらず、民間及び公務で働く正規労働者の賃上げにも波及し、愛知経済に好循環をもたらすものです

2.愛労連発表の「最低生計費調査結果」を昨年に続き審議会資料として用い、意見陳述を実施すること

(1)昨年に続き、愛労連発表の「最低生計費調査結果」を審議資料として用いることを求めます。

(2)「最低生計費調査結果」の説明や最低賃金近傍で働く労働者などの生活や労働実態を審議に反映させるため、全国79%の都道府県で行われている意見陳述を実施してください。

(3)労働者の生計費に関わる資料は、二人以上世帯のものではなく、単身勤労者世帯のものを用いるよう求めます。その上で審議に用いていただきたい「労働者の生計費資料」として、次の資料の提出及び説明を求めます。

 ①.2026年改定版:愛知県若年単身世帯の最低生計費試算結果(愛労連)

 ②.家計簿による生活費調査(2026年2月)の単身世帯の結果一覧(愛労連)

 ③.単身勤労者世帯の年齢階級別月額消費実支出(月平均、愛知県、総務省「2024年家計構造調査」)

 ④.単身勤労者世帯の実支出・生計費(月平均、愛知県、2024~2026年、愛知県・大都市)(総務省「家計構造調査」「家計調査」など)

【理由及び背景】

(1)令和8年度の愛知労働局行政運営方針では、「Ⅰ」の②「最低賃金制度の適切な運用」において、最低賃金審議会の円滑な運用として、「適切な資料の収集、作成、提示に努め……審議を尽くして金額が決定されるよう『審議会』の円滑な運営を図る」とされています。
 しかし、これまで提示された資料を見る限り、「労働者の生計費」に関する資料は極めて乏しいと言わざるを得ません。昨年の資料を見ても、①労働者の生計費に関する資料は2点、②労働者の賃金に関する資料は7点、③事業の支払能力に関する資料は11点となっています。労働者の生計費資料の家計統計表は二人以上世帯のものであり、「適切な資料の提示」という観点から改善が求められます。

(2)議事録によれば、2024年及び2025年の審議で取り上げられている労働者の生計費の指標は、主に消費者物価上昇率にとどまっています。生計費の水準については、「連合愛知のリビングウェイジ」が若干議論されているものの、「生計費」そのものに関する審議は乏しいと考えます。

(3)意見陳述については、37道府県(全国79%)で実施されています。愛知においても「意見を反映した審議をしている」とされていますが、例えば、令和7年賃金構造基本統計調査(愛知)を見ると、医療・福祉施設等は全産業平均と比較して約6万5千円少なく、訪問介護従事者は約4万3千円少なくなっています。また、非正規労働者は最低賃金の引上げとともに賃上げされるというのが現場の実態です。
 このようなケア労働者の実態が、これまで審議に十分反映されてきたと言えるでしょうか。2025年の愛知における主な産業別就業者数は、①製造業99万8千人、②卸売業・小売業63万3千人、③医療・福祉52万6千人となっており、医療・福祉は前年比7.8%増と、他産業と比べても突出して増加しています。現状に即した審議を行うには、ケア労働者の意見陳述の実施が必要です。
 また、他の地方最低賃金審議会では、最低賃金近傍で働くアルバイト大学生や技能実習生、さらには県民生活や経済に責任を持つ知事の意見陳述も行われています。
※意見陳述の実施道府県:北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、岐阜、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

3.最低賃金引上げを円滑に進めるため、中小企業に対する特別な財政措置を政府に要望し、その旨を答申に明記すること

(1)最低賃金の引上げを円滑に進めるため、社会保険料の事業主負担分の免除・軽減等、中小企業に対する特別な財政措置を講ずるよう政府に要望し、その旨を答申に明記することを求めます

(2)昨年度、国に対し労働局又は審議会として行った意見・要望の内容をお示しください。

【理由及び背景】

(1)最低賃金の大幅引上げには、中小企業への財政支援が欠かせません。昨年の日本商工会議所・東京商工会議所の調査では、最低賃金引上げへの対応のために政府等に求める支援として、「税・社会保険料負担等の軽減」が77.5%、「助成金の拡充・使い勝手の向上」などが5割近くとなっています。
 私たちは、これまでも署名や要請書を通じて、中小企業支援策の抜本的拡充を要望してきました。また、審議においても、使用者代表から3点にわたり意見が出されています。

(2)昨年、労働局又は審議会として、国に対して中小企業支援に関するどのような意見を上げられたのか明らかではありません。関係文書の提示及び説明を求めます。
 なお、愛労連は6月5日、愛知県知事に対して、他県で実施されている「賃上げした企業への財政支援」を愛知県としても具体化するよう要請したことを申し添えます。また、6月1日には、全労連として秋田県の担当課から、現在実施されている支援策について説明を受けました。国の支援策が脆弱であるがゆえに地方が新設・国制度の上乗せを実施しているのであり、国の抜本的な制度拡充が必要です。

4.公開審議を拡充し、答申書に改定理由及び根拠を明記すること

(1)休会中の打合せについては可能な限り短縮し、県民に開かれた場での充実した審議を求めます。議事録には休会時及び再開時の時刻記載を求めます。

(2)答申書に改定金額だけでなく理由及びその根拠がなぜ明記されないのですか、今年度から明記を求めます。

【理由及び背景】

(1)2023年から専門部会が公開されたことは評価しています。しかし、貴局がいう「個人情報の観点」という、公開できない個人情報とは具体的に何なのでしょうか。また、休会時間が長過ぎるというのが傍聴者の多くの意見であり、県民に開かれた愛知地方最低賃金審議会とは言えません。公開での審議充実が必要です。

(2)2024年及び2025年の審議では、公益案において改定理由が説明されましたが、答申には「改定理由」が明記されていません。15都道府県(2024年調査)では、答申に改定理由を明記しています。愛知において明記されない説明が必要です。

(3)最低賃金に違反した企業には罰則が適用されます。すなわち、最低賃金額を決定することは、強制力を持つ規範を定めることにほかなりません。法律の制定や改定においては、立法事実に基づく提案理由が示されます。理由がなければ、法等の制定・改定の意味を失います。
 ところが、最低賃金の答申には「理由・根拠」の説明がありません。「理由・根拠」のない答申、すなわち結論のみが示され、それに基づいて労働局長が決定しても、県民及び労働者の理解を得られません。

(4)他の労働局では、議事録に休会時間が記載されている例もあります。本要請の趣旨に照らし、愛知労働局においても、休会時間及び審議再開時間が分かるようにすることが必要です。

5.愛知県最低賃金の発効日が10月1日となるように審議をすすめること

(1)愛知県最低賃金の発効日が10月1日となるよう、審議することを求めます。

(2)中央最低賃金審議会に対して、最低賃金法の原則に照らし、発効日が遅れないよう審議を行うことを求める意見を上申してください。

【理由及び背景】

(1)昨年、一部の都道府県で生じた大幅な発効日の遅れは、最低賃金近傍で働く労働者だけでなく地域経済にとっても重大な問題となりました。労働者の期待を裏切り、働く意欲を奪い消費を冷え込ませるものでした。さらに、行政や県政への信頼をも損なうものでした。

(2)最低賃金法第10条では、「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会の意見を聴いて地域別最低賃金の決定をする」とされており、同法第14条では、地域別最低賃金は「公示の日から起算して30日を経過した日から、その効力を生ずる」と明記されています。法の趣旨を踏まえて審議をすすめることが必要です。

以上

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