社会的な賃金闘争

社会的な賃金闘争とは、賃上げを個別企業や個別職場だけの交渉課題にとどめず、すべての労働者の賃金底上げを社会全体の課題として位置づけ、職場・地域・産業・自治体・国に対して要求を広げていく賃金闘争である。

全労連は、2014年4月に「中小企業支援の拡充と最低賃金の改善による経済好循環の実現を」と題する提言を行い、2015国民春闘では、最低賃金・公契約・公務賃金改善などを「社会的な賃金闘争」として大きく位置づけた。さらに、全国一律最低賃金制度の実現を求める法改正署名を開始し、同年秋からは署名を通年化するとともに、「地域活性化大運動」を提起した。賃金底上げと中小企業支援の抜本的強化を重点に、地域の労働組合、経済団体、商店街などとの対話・懇談をすすめてきたことが、この運動の出発点である。

この闘争の基本は、賃金を「企業の支払い能力」だけで決めるのではなく、労働者が人間らしく暮らすために必要な生計費を基準に引き上げることである。最低生計費試算調査などを活用し、「普通に暮らすにはいくら必要か」を社会に示すことは、最低賃金や公務・民間賃金の引き上げを求める重要な根拠となる。

社会的な賃金闘争は、中小企業を敵にするものではない。むしろ、中小企業が賃上げできる条件をつくるために、大企業による下請単価の買いたたきや不十分な価格転嫁をただし、国や自治体による直接支援を求める運動である。最低賃金の大幅引き上げと中小企業支援を対立させるのではなく、地域経済を守る一体の課題として位置づけるところに特徴がある。

愛労連は、この全労連の提起を受け、社会的な賃金闘争を愛知の産業構造や地域課題に即して具体化してきた。最低賃金1800円以上の実現、公契約条例による賃金下限の設定、ケア労働者の公定価格・報酬の引き上げ、公務員賃金の改善、非正規労働者の均等待遇、中小企業支援、価格転嫁の実現を一体の課題としてすすめている。

とりわけ愛知では、トヨタを頂点とする自動車産業のサプライチェーンが地域経済に大きな影響を持っている。だからこそ、取適法の活用やトヨタ総行動などを通じて、大企業の社会的責任を問い、下請中小企業が賃上げ原資を確保できる公正な取引を求めることが重要である。これは、中小企業の経営を守る取り組みであると同時に、地域全体の賃金水準を引き上げるたたかいでもある。

また、社会的な賃金闘争は、職場での要求づくりや団体交渉を弱めるものではない。職場の賃上げ要求、ストライキを含む団体行動、最低賃金署名、自治体要請、審議会への働きかけ、地域宣伝、記者会見、世論づくりを結びつけることで、職場のたたかいを社会的な力へ発展させるものである。

つまり、社会的な賃金闘争とは、労働組合が職場の賃上げ交渉を土台にしながら、最低賃金、公契約、公務賃金、ケア労働者の賃金、非正規労働者の処遇改善、中小企業支援、価格転嫁を結びつけ、社会全体の賃金水準を引き上げるために取り組む運動である。

愛労連の視点でいえば、それは、職場の賃上げを社会全体の賃金底上げにつなげ、地域経済を支える中小企業が賃上げできる条件をつくり、すべての労働者が人間らしく暮らせる賃金水準を実現するたたかいである。職場・地域・社会を結びつけて賃金を引き上げるところに、社会的な賃金闘争の意義がある

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