【談話】生計費の資料も議論も不十分なままの最低賃金改定決定は許されない

愛知県最低賃金55円引き上げ(1,195円)の答申について

 8月21日、第528回愛知地方最低賃金審議会(異議審)が開催され、10月1日から愛知県最低賃金を時間額1,195円とすることを決定し、愛知労働局長に答申した。

 この審議会は「異議審」と呼ばれ、8月5日付で労働局長が公示した「愛知県最低賃金の改正決定に係る愛知地方最低賃金審議会の意見に関する公示」にもとづき、8月20日までに提出された団体・個人からの異議申出34件(労働団体・労働者33件、使用者団体1件)について審議を行った。

 異議申出の多くは、「労働者の生計費」に見合わない55円という低額な引き上げに対するものであった。2026年に値上げされた、または値上げが予定されている飲食料品は約1万8千品目にのぼり、前年を上回るペースとなっている。物価高騰が続くもとで、55円の引き上げ、時間額1,195円では、労働者の生活を改善するには到底足りない。

 今回、何よりも問題なのは、最低賃金改定を審議する前提となる3要素(労働者の生計費・賃金・通常の事業の賃金支払能力)のうち、「労働者の生計費」にかかわる資料と審議が不十分なまま改定額が決定されたことである。

 7月27日の第1回専門部会で初めて「家計統計表」「家計構造調査」が資料として示されたが、その内容についての説明は一切なかった。しかも、これらの資料には「無職世帯」が含まれており、最低賃金の改定を検討する資料としてそのまま用いることが適切とはいえない。

 そこで愛労連は、同調査から「勤労者世帯」のデータを抽出した資料とともに、昨年は審議資料として採用された愛労連の「愛知県最低生計費試算調査結果(若年単身世帯)―2026年版」(6月26日、県政記者クラブで発表)を提供し、少なくともその内容を説明する機会を設けるよう求めた。しかし、この要請は受け入れられないまま審議が進められた。

 労働局長も労働基準部長も「3要素を踏まえた審議」を強調したにもかかわらず、「生計費」にかかわる資料が実質的には「消費者物価指数」に偏ったまま審議が進められたことは、極めて問題である。

 一方、8月5日の審議会で、労働者委員が約8千人の長時間パート労働者へのアンケートに寄せられた生活実態や切実な声を紹介したことは、貴重な意見表明であった。愛労連の代表は、すべての審議会と専門部会を傍聴してきた。そのうえで、生計費について十分な資料が示されず、活発な審議も行われないまま改定額が決定されたことに強く抗議する。

 また、労働者などによる意見陳述は全国の8割を超える審議会で行われているが、愛知では今回も実施されなかった。9千筆を超える署名、59通の意見書に加え、今回提出された異議申出でも意見陳述を求める声が多数寄せられた。それにもかかわらず、異議審では「すでに議論を尽くしている」として意見陳述を認めなかった。しかし、生計費をめぐる審議の実態は前述のとおりであり、「議論を尽くした」とは到底いえない。

 一方、中小企業支援について、平成5年に審議会長から労働局長宛てに出された「政府に対する要望」以来、長年にわたり具体的な要望は行われてこなかった。今回、「愛知労働局に対する要望」が出されたことは、愛労連が長年求めてきたことでもあり、この点は評価したい。

 ただし、異議申出でも指摘したとおり、賃上げ助成の拡充をはじめとする中小企業支援のさらなる強化は、愛知労働局だけで実施できるものではない。社会保険料の事業主負担の軽減など抜本的な中小企業支援を国に求めるとともに、愛知県独自の賃上げ支援策を実施するよう、愛知労働局が国や県に対して積極的に働きかけることを求める。

愛労連は、昨年秋から署名(自筆・オンライン)や宣伝活動をすすめるとともに、愛知労働局・最低賃金審議会・愛知県への要請、意見書・異議申出書の提出運動にとりくみ、最低賃金の大幅引き上げの必要性を広く世論に訴えてきた。10月1日の発効日には、新しい最低賃金額を広く周知するとともに、「今すぐ1,800円、めざせ2,000円」を掲げた宣伝行動にとりくむ。10月からは、全国一律最低賃金制度の実現に向けた法改正を求める署名活動も開始する。

非正規労働者やケア労働者をはじめ、物価高騰のなかで生活の安定を求める労働者・県民の切実な声に応えるため、すべての労働者の大幅賃上げと底上げをめざし、次のたたかいをただちに開始する。

以上

2026年8月21日

愛知県労働組合総連合(愛労連)
事務局長 竹内 創

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